私が『コンビニ兄弟 ―テンダネス門司港こがね村店―』を読もうと思った理由はただ1つ。最近、船に乗って大阪から物語の舞台である門司港に行ってきたから。門司港はレトロな街並みが美しい観光地。ただし観光地を少し離れると人の暮らしている気配が感じられる場所でもある。
そんな門司港を舞台にした小説なら読まない訳にはいかないではないか。
ドラマを観ないので知らなかったのだけど読了後にNHKでドラマ化もされているし、漫画化もされている人気作で続編もたくさん出版されているとのこと。
コンビニ兄弟 ―テンダネス門司港こがね村店―
- 九州限定コンビニチェーン「テンダネス」門司港こがね村店を舞台に、店長・志波三彦とパート店員の中尾光莉、アルバイトの廣瀬太郎らが日々の接客を通して物語を紡ぐ。
- 全6話の連作短編方式。各話では店を訪れる常連客や地域の人々が抱える悩みや出来事を軸に、それぞれ異なるエピソードが描かれる。
- 志波三彦を中心に、志波二彦や志波樹恵琉、中尾光莉、廣瀬太郎ら門司港こがね村店の関係者が、物語全体を通して地域との交流が描かれる。
- 「コンビニ」という身近な場所を舞台に、来店客一人ひとりの人生と店員たちとの関わりを積み重ねていく。
感想
なんだか漫画みたいだった。映像化されたのもなるほど納得。話のテンポが良くてサクサク読める。各話は基本的にハッピーエンド。どなたでも安心してお楽しみ戴けるタイプの作品だった。
江戸時代なら人情長屋。昭和の頃なら商店街あたりが人情物の定番だったと思うのだけど、現代では長屋も商店街も廃れてきている。人が気軽に集える場所…と言うと確かにコンビニは適当なのかも知れない。スーパーだと広過ぎるのだ。
ひと昔前までの高齢者層は「コンビニなんて割高だから行くものじゃない」と言っていたけれど、最近は「大型スーパーで買い物するのはシンドイ」と言う理由からコンビニを利用する人が多い。私の住んでいる近隣のコンビニでも高齢者をよく見掛けるし、お惣菜等の品揃えも「1人暮らしの高齢者を意識してるのかな?」と感じる商品が増えている。
個性的な人達が繰り広げる笑いあり涙ありの1話完結もので、よく出来ていると思う。いわゆる「いい話」が多いので安心して読み進めることができる。
ただ私の好みとしては言葉遣いや表現が下品なのが気になった。ネットスラング的な言葉が多いのだ。実際、私もSNSやブログではネットスラングを面白がって使うことがあるけれど「本」という媒体において「フェロモン垂れ流し」みたいな言葉が使われるとゲンナリしてしまう。もちろんそう言った表現も作品によってはアリなのだ。エロをテーマにした作品だったり、あるいは西村賢太の描く世界であるならば、しっくりくる。
『コンビニ兄弟 ―テンダネス門司港こがね村店―』の場合、人情小説的な世界観なのでフェロモンがどうの、ホストがどうのと主婦の口から出てくるあたりが下品に感じてしまった。イケメンのコンビニ店長を「フェロ店長」と呼び、pixivに日常漫画を投稿する…なんてこともあったりして、今の社会を描写したものだと言われてしまえばそれまでだけど、品のない世界観だと感じてしまった。
続編が何冊も出ているようだけど私はこの1冊で遠慮したい。


