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慈雨 柚月裕子 集英社文庫

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柚月裕子って書店に行くと著作が常時平積みされている印象がある。私はミステリがあまり得意ではないものの、てっきり1~2冊は読んだことがあると思い込んでいたけど、初挑戦だった。

作風等は何も知らず真っ白な状態で手に取った。

私はウォーキングが趣味で四国巡礼にもちょっぴり興味があるので退職した刑事が四国巡礼の旅に出て云々…というあらすじに惹かれて読もうと思った次第。

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慈雨

ザックリとこんな内容
  • 刑事を定年退職した神場智則は妻の香代子とともに四国八十八ヶ所の巡礼の旅に出る。それは警察人生42年で自らが関わった事件の被害者を弔うという静かな目的があった。
  • 旅の途中で神場はテレビのニュースで失踪した少女の遺体発見を知る。それは16年前に自分が捜査に携わった幼女殺害事件と驚くほど似ており、神場の胸に封じた悔恨が揺れ始める。
  • かつての部下・緒方刑事から捜査の報告を受けながら神場は退職後でありながらも過去の捜査に引き戻される。
  • 巡礼の道すがら神場は「逃げた」人生と埋もれた真実に向き合っていく…

感想

なんか無難に面白かった。そもそも私は刑事物とか警察小説はほとんど読んでこなかったので「お仕事小説」として読んでしまっていた気がする。それと同時に「四国巡礼小説」としても楽しませてもらった。

他の警察小説をよく知らないので偉そうには言えないのだけど、警察小説って歌舞伎や宝塚歌劇のような「型」があるように思う。

  • 叩き上げの刑事とキャリア組の話
  • 叩き上げの老刑事
  • 謎の呼び名「山さん」とか「安さん」的なアレ
  • イケメンの若い刑事
  • ハツラツとした女性刑事

……これらの要素をいくつか組み合わせて構成されていることが多いのだけど、今回は女性刑事こそ出てこなかったものの、私がイメージする「警察小説」そのもの…って感じのテンプレに則っとったものだった。

「過去に起こった事件の謎を解く」という大きな目的を軸に、主人公である神場が四国巡礼をする中で彼が関わった事件やプライベートの物語がちょいちょいと挟み込まれていく。話があっちこっち飛ぶので飽きることがないしサクサクと読み進めることができた。

1つ1つのエピソードについてはすべて共感できる…とは言い難かった。ツッコミ要素も多くて苦笑いしてしまうところもあったものの、トータルとしては面白い部類だと思う。「飽きることなく読ませる」と言う意味では良かったと思うのだけど、様々な要素を詰め込み過ぎだと感じた。

良く出来た話だし、主人公や主人公に関わる人間達は「良い人」揃いで文句の言いようがないのだけれどグッと心に刺さる部分がなくて、文章があっさりと私の横を通り過ぎていった感じがした。

読書中はそれなりに楽しませてもらったけれど半年もすれば忘れてしまいそうな気がする…そんな作品だった。

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