お久しぶりの櫛木理宇の作品。読むのはこれで4冊目。櫛木理宇の作品って基本的に嫌な気分になる作品が多いので「めっちゃ好き」と素直に言えないのだけど面白いのだから困っちゃう。
『執着者』は櫛木理宇にしては希望の持てる(風)な終わり方をしているのだけど、途中はかなり胸クソ悪い部分が多い。ただ「なんかそれって分かるわぁ~」ってところが多いのが悔しいんだな…これが。
執着者
- 平凡な会社員・友安小輪は恋人と同棲を始めるが謎の老人による執拗なつきまといが始まる。警察に相談するも軽視され、恐怖がエスカレートする中、恋人の智保が失踪する。
- 荻窪署の刑事・佐坂湘は、姉をストーカーに殺された過去を持ち、若い女性を狙う事件に敏感だ。都内で発生した若夫婦襲撃事件の捜査に乗り出す。
- 大学院生・丹下薫子は不明の老人に執拗に付きまとわれ、警察に相手にされず、恐怖で家に閉じこもる生活を強いられる。
- 一見無関係な三つの事件が佐坂の捜査を通じて過去の事件と絡み合い、複雑な真相へと繋がっていく…
感想
『執着者』は今までの櫛木理宇作品と較べると読後に感じる「嫌な感じ」が控えめな気がする。だけどそれはあくまでも「読後に感じる」ってところであって、読んでいるあいだはかなり嫌な感じだ。
そもそも「老人のストーカー」ってところから物語がスタートするので気持ち悪いことこの上ない。そして私自身、若い頃は登場人物に似たところがあったので「ああ…分かる」と共感できてしまうのが悪かった。
ある種の犯罪者は美人な女性を選ぶのではなく「清楚系で真面目で反撃してこなさそうな優しそうな女性を狙う」ってホントそれ過ぎる。10代、20代の頃、私は高齢男性からやたら絡まれたしナンパされた。当時の私は心優しい女性だったので優しくふんわりお断りしていたけれど、この年になって改めて考えれば失礼な話ではある。彼らはどうして自分が若い子と付き合えると思えたのか?
『執着者』の中で描かれていたことは「分かる」「それってあるあるですね」ってことばかりだった。だけど読んでいてイラッとされられたのも事実だった。
作中に登場する女性達があまりにも自分で動こうとせず他人に頼りっきりだった…ってこと。「怖い目にあったら動けないんですよ」って考えもあるだろうけど、どいつもこいつも危機感が薄いし、頭が悪いし「自分のことでしょ? もっと努力しなさいよ」としか思えなかった。
櫛木理宇は本当に嫌な話を書くのが上手だよなぁ~と感心した。そして「しばらく櫛木理宇の摂取は時間おこう」とも思った。とにかく濃いのだ。櫛木理宇の小説は。読むのにガッツがいるし読んでる最中(または読後)は自分の中にダメージが残る。
ちなみに。この作品を読み終えた日の夜は変な夢を見てうなされてしまったほどだ。全部櫛木理宇のせいだ。夢の中に侵食してくるくらいパンチのある力強い作品だった。