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ザ・ロイヤルファミリー 早見和真 新潮文庫

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最近、すっかり早見和真の作品にハマっている。『店長がバカすぎて』と『新!店長かバカすぎて』『アルプス席の母』に続く4冊目だけど、今回読んだ『ザ・ロイヤルファミリー』も面白かった。

『ザ・ロイヤルファミリー』は競馬がテーマの作品で山本周五郎賞とJRA賞馬事文化賞受賞している。私はスマホゲームの『ウマ娘』がキッカケで競馬に興味を持つようになったのだけど、競馬をテーマにした作品って不思議と面白い物が多い気がする。

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ザ・ロイヤルファミリー

ザックリとこんな内容
  • 父を亡くし空虚な心を持て余した税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券を縁に人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことになった。
  • 山王は競馬に熱中するあまり馬主として〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める。
  • 栗栖は山王と共にロイヤルホープと有馬記念を目指すのだが…

感想

競馬をテーマにした小説と言っても色々ある。超有名どころだと宮本輝『優駿』とか。最近読んだ作品だと古内一絵『風の向こうへ駆け抜けろ』も面白かった。『ザ・ロイヤルファミリー』は騎手寄りの物語ではなく、馬主の物語。

「継承」がベースになっていて、それはサラブレッドの血もそうだし、人間(親子)の継承も含まれていた。馬と人。親子2代に渡る物語で語り部になっている秘書の栗栖は親子二代に仕えている。

私は競馬にちょっと興味を持っている程度で競馬ファンではない。大きなレースの時は100円程度の馬券を買ってTVでレースを観たりするけれど、せいぜいその程度。賭け事には向いてないと思っているので競馬にハマることはないと思う。だけど馬の継承の話や騎手の裏話には興味がある。

『ザ・ロイヤルファミリー』は馬主がどうやって馬を買い付けているのか…とか、競走馬はどんな風に育てられているのか…などが小説の中でしっかり描かれているので「競馬初心者」が読むにはうってつけの作品だった。

栗栖が最初に仕えた山王耕造は「昭和・平成のワンマン社長」って感じの人物で軽く下品で嫌な男なのだけど不思議と憎めないタイプ。わがままで自分勝手ではあるけれど「競馬」に対して…特に「馬」に対して真摯なところが良かったのだと思う。

私が競馬を観戦するようになって感じたのは「競馬はよく分からない」「馬は分からない」ってこと。素晴らしい血筋で期待されていた馬があっさり負ける…なんてよくあることだし、順調に成績を残していた馬が怪我や病気で引退したりもする。

山王耕造と栗栖はロイヤルホープを有馬記念で走らせることを目標に奮闘するのだけど、なかなか上手くいかない。上手くいかない感じが妙にリアルで、やきもきしながら応援してしてしまった。

今回はネタバレを避けたいので詳しい経緯は伏せさせてもらうけれど、ロイヤルホープの血は継承され馬主も山王耕造から息子へと継承されていく。『ザ・ロイヤルファミリー』は競走馬の物語であると同時に家族の物語でもあった。

そして競馬だけでなく人生だって上手くいかないことの連続。山王耕造にしても彼の周囲にいる人達にしても、それぞれ自分の思っているように事は運んでいかないのだ。

「上手くいかないことだらけだけど、それでも突き進む」みたいな感じ。人生も競馬も似ているなぁ…と思ったりした。

競馬の世界を眺めつつ家族のドラマを楽しめる作品でイッキ読み出来る面白さだった。そして読後に「もしかして続編もアリ?」と思って調べてみたところ速水和真のインタビュー記事が出てきて『ザ・ロイヤルファミリー』で書き切ったので続編の予定はないとのこと。

読み終わるのがもったいない…彼ら(馬も人も)をずっと追っていたい…と思ってしまうような作品だった。

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