お久しぶりの京極夏彦…と言っても小説ではない。岩崎書店がシリーズ化している「かいだん絵本」の1冊。
かいだん絵本は現在、大活躍をしているミステリ作家と画家(イラストレーター)がタッグを組んで本気で「怖い本」を作ってみました…的なシリーズ。宮部みゆきの『悪い本』あたりが人気の火付け役になったように記憶しているのだけど、今回読んだのは京極夏彦。
『いるのいないの』は大人が読んでも怖いらしい…と聞いて図書館で借りてきた。
いるのいないの
- 主人公は田舎のおばあちゃんの家で暮らすことになった少年。年齢は書かれていないけれど、たぶん小学生。
- おばあちゃんの家は昔の日本にありがちな田舎の古い一軒家。天井には太い梁。沢山のネコを飼っていて、壁にはヤモリ…
- 主人公はおばあちゃんの家で暮らすうちに「あること」に気がついてしまうのだが……
感想
『いるのいないの』は一応、絵本の形をしているけれど、幼児には向かない作品だと思う。世の中には「絵本は幼児が読むもの」と思っている人も多いけれど、幼稚園や保育園の読み聞かせにはオススメできない。
……すごく怖いのだ。何ならR指定を付けても良いと思う。私にR指定を付けさせてくれるならR6にする。
何が怖いって絵が怖い。とにかく気持ち悪くて人の心を不安にさせるようなタッチで実に素晴らしい。描かれているのは何てことのない田舎の家。おばあちゃんがいて、ネコがいて雑多ながらも清潔な台所があって。
今の日本の家は壁も明るいし照明器具の効果もあって「暗い」と感じることがないけれど、昔の日本家屋はとにかく暗かった。谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』しちゃうくらいに、日本の家は闇があった。
私も子どもの頃、田舎の家に遊びに行ったことがあるので田舎の家の「なんとなく怖い感じ」はよく分かる。大人目線で見るとなんてことのない光景も子どもの目を通して見って見える…ってところもあったとは思う。
『いるのいないの』は田舎家の不気味さや暗闇の怖さ、そして「よく分からない存在」を上手く描き出している。京極夏彦の文章と町田尚子の絵が上手く合わさったからこそ出来た作品だと思う。
興味のある方は図書館で見掛けたら手にとって戴きたいと思うのだけど、あくまでも絵本なのでガチガチのホラー小説をイメージして読むとガッカリされるかも知れないので悪しからず。
余談になるけど図書館で借りた本はラストシーンの前のページが破れていて、図書館員さんが修繕した跡があった。「子どもの読むものだから仕方ないよね」と思いながら、ページをめくって納得した。本を破っちゃった子はビックリして思わず力が入ってしまったのだろう。
「これは…うっかり破っちゃう気持ちも分かる…」と妙に納得してしまった。ラストページが気になる方はご自身の目で確かめて戴きたい。