バブルがはじけた後の不況時代に青春を送った若者達の青春を当時の流行っていた物や事件をチラホラ織り交ぜながら描いた作品だった。
10代後半から20代前半の頃の自分は「生意気だった」と自覚がある人が読めば、それなりに面白い……と言うか、恥ずかしさに赤面しつつ読める作品だと思う。
桃の向こう
頭でっかちで素直になれない屈託男子と自己中心的でノリが身上のお気楽男子に生真面目で誇大妄想気味な一本気女子。
出会いから紆余曲折のその後の10年を描く、バブル後の絶不況時に青春をおくったすべての人々へお届けする、青春純情小説。
アマゾンより引用
感想
何人かの登場人物が出てくるのだけれど、それぞれ「そんなタイプの子っているよねぇ」と思わせる人物像になっていて、飽きがこなかった。
たとえば理屈っぽくて生き辛さを味わっている青年(後にフリーターからライターになる)。その対局には、なんでもそつなくこなす、今の言葉で言うならリア充の青年。そして育ちが良いお嬢様なのにボランティア活動から新興宗教にのめり込んでしまった女性…等。
主人公達の年齢に近くて読むと感想が変わるのかも知れないけれど、その時期を通り過ぎた人間が読むと、ただただ恥ずかしい。
彼らはある意味真面目なのだけど、不遜で自意識過剰で、馬鹿なのだ。でも、それが若さだと思うし、若い人の特権だと思う。なんだかすごく甘酸っぱい。
そこそこ面白かったのだけど、残念なのは登場人物達が、本質的には「いい奴」ばかりだったってことだろうか。毒が足りなさ過ぎる。
そして、もう1つは時代を限定してしまった…って事。
もっとも、それはこの作品の長所でもあるのだけれど、時代をガッチリ固めてしまったことで、作品の普遍性が薄れてしまった感がある。
もちろん時代背景が色濃くても読み継がれる作品だってあるのだけれど、そこまで出来た作品ではないように思う。
多少、残念なところがあるものの、青春小説としては上手く仕上がっていると思う。
もっとも無難に仕上がっているがゆえにインパクトは低めかも知れない。この作者の作品を読むのは初めてなので、追々他の作品も読んでみたいと思う。