林真理子はずっと読まず嫌いをしていた作家さんなのだが『本を読む女』を読んで「こりゃ、ただの流行作家じゃないかも」なんて思って、読むようになった。
今回の作品は『本を読む女』を焼きなおした感じで、イマイチいただけなかった。
面白くなかった……というほどのものではないし、単体で読めば、そこそこ読めたと思うのだが同じようなノリの作品を読む場合、はじめて読んだ作品に軍配を上げてしまうのは仕方がないと思う。
文学少女
「私ならもっとうまくやる」そして彼女は作家になった。奥手な娘史子は、本を読むことで男を知り、想像の中で男と関係し、書くことで現実に男を愛した。著者の告白にも似た、自伝的短篇集。
アマゾンより引用
感想
今回の主人公は、林真理子に似せた女性作家。そして『本を読む女』の主人公だった作者の母親が副主人公。
自伝的作品…と言っても、主人公は林真理子に似せているだけで、主人公=作者ではないと思う。
ただ、林真理子が主人公に思い入れて書いたであろうことは想像に難くない。
本を愛し尽くして本屋を営む母親も、その母親に反発しながら作家になった娘も「本」の魔力に魅入られてしまった人間である。
私は本好きなだけに、彼女達の気持ちは痛いほど理解できるが、本好きでない人から見れば、ちょっと異常な感じさえする。
そこまでの思い入れる存在を持っているというのは、幸せなのか、それとも不幸なのか。なんにせよ、滑稽であることは間違いない。
主人公が作家になるあたりまで面白く読んでいたのだが、物語の後半で主人公が「妊娠」について考えるくだりは余分だったと思う。
高齢出産を果たした林真理子だからこそ、どうしても書いておきたかったのかも知れないが、作品の中では浮いた存在でしかない。そういうことを書きたいのなら、エッセイでやってくれよ……と興醒めだった。
そこそこ面白く読みすすめていただけに残念である。
ちなみに私は本に魅入らたことを幸せだと思っている。
だって楽しいんだもん。力になってくれるんだもん。あらためて作者の書いた『本を読む女』読んでみようかと思った。『本を読む女』の主人公は、どこか自分と被るところがあるので。