原田ひ香の作品を読むのは『おっぱいマンション改修争議』がはじめて。
なんとなく「原田マハ」と混同していて「スイーツ寄りの作品を書く作家さんなんだろうな」と思いこんでいたらしく、今まで敬遠していた。
今回は題名に惹かれて手にとってみたのだけれど、予想外に面白くて「どうして、今まで原田ひ香を敬遠していたんだろう?」と後悔している。
おっぱいマンション改修争議
- 天才建築家が設計した通称「おっぱいマンション」。建築当初はデザイナーズマンションとして際立っていたものの、劣化して建替・改修問題が持ち上がる。
- 建築家の娘、建築家の弟子、学生運動あがりの元教師、秘密を抱えた元女優等を巻き込んでの大騒動に発展。
- おっぱいマンションの隠された秘密と人間ドラマを描くエンタメ小説。
感想
私は独身時代、建築関係の職場で働いていたとこがあるので、この作品のテーマはすごく分かる!
『おっぱいマンション改修争議』は築50年になる当時は最先端のデザイナーズマンションの建替えにまつわる騒動を描いた作品なのだけど、この類の問題は日本中のあちこちで勃発している物と思われる。
人間がパッと見で「わぁぁ。素敵~」と感じる建物って、実際に住むとなるとロクなもんじゃない。
本の感想からズレてしまうので、具体的なダメ出しは書かないけれど、建売のマンションや戸建住宅の「ハンコを押したような面白味のない間取り」って、そのパターンに行き着くまでに様々な試行錯誤があり「現代人が使いやすい設定」をギュギュッっと詰め込んでいる…って事を強く主張したい。
建替え問題に揺れる「おっぱいマンション」もデザイン重視の欠陥マンションだ。
ただ問題なのは、たとえ欠陥マンションでも「その建築物に住みたい」と思う人がいる…ってことだ。人間の価値観は人によって違うので「住みやすさ」を求める人もいれば、別のところに価値観を持つ人もいる。
『おっぱいマンション改修争議』は3つの軸によって構成されている。
- 建替え問題の是非
- 建築業界にありがちな闇の話
- おっぱいマンションに隠された謎
3つの軸を上手く絡めていくことで「マンション建替えのドタバタ物語」と言うだけでなく、なかなかしっかりした作品に仕上がっていく。
登場人物達はそれぞれの立ち位置で「おっぱいマンション」と向き合っていて、読者は誰かの視点に肩入れして読むことができるのではないかと思う。
お仕事小説とも言えるし、現代社会に起こる問題を取り上げた小説とも言える。
コミカル過ぎず、重過ぎず、読みやすい。
今回は出来るだけネタバレを書きたくないので、突っ込んだ内容を書くのはやめておくけれど、私は登場人物に入り込んで夢中になって読んでしまった。
原田ひ香…今までノーチェックだったけれど、続けて読んでみたいと思う。