一応、青春小説になるのだろうか。悩み盛りの男子高校生が主人公。
ちょっと家庭環境に恵まれない子で、父親と2人暮らし。大人からすると屁理屈としか言いようのない内面が吐露されていくのだけど、彼の内面の吐露にはちょっぴり好感が持てた。
その人を殺したのは
すべてはその路地からはじまった―。水島しぐれの笑みに触れ、ぼくは恋の深い穴に落ちこんだ。
でも、ぼくは力不足だ。17歳の、ぼくの限界。面倒を見てくれた祖父母、心が行き違ったままの父、不思議な魅力を放つ同級生、ぼくのことを恋敵と勘違いする親友…ぼくの周りから、皆が次々と消えていく。
アマゾンより引用
感想
息子のことなど、これっぽっちも考えていない父親、自分のことを恋敵だと勘違いいる親友、自分へ想いを寄せてくれる女子高生。そして主人公が想いを寄せる女子大生。
登場人物達は個性的で、話にも勢いがありそこそこ面白く読ませてもらった。
が「そこそこ面白い」と思ったのは途中までの話。途中からは、なんとも突拍子もない展開になってしまってウンザリだった。
なんと言うか……上野哲也はきっと楽しく描いたのだろうと思う。文章の勢いは半端じゃない。
だけど、あまりにも唐突過ぎるし稚拙なのだ。
最後まで読んで「だから、結局のところ何が言いたかったの?」と呟いてしまった。けっこう面白い設定だと思ったし、ストーリー自体も悪く無かったのだけど、作品の「芯」が見当たらない。
主人公や登場人物が生き生きしていただけに「惜しいなぁ」と思ってしまった。
上野哲也の作品を読むのは3冊目だけど、なんだか微妙に仕上がりが「惜しい」感じになっている作家さん……という印象がある。
目指すところは、なんとなく分かるような気がするのだけど空回っているような。いっそ直球で普通っぽい青春小説を書いた方が面白いんじゃないかと思う。
ひねりを加えたところが、滑っているのだ。
途中までは面白く読んだけれど、結果的に「いまいち」としか言いようのない1冊だった。