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いっぺんさん 朱川湊人 実業之日本社文庫

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花まんま』を読んだことで私の中の朱川湊人熱がにわかに再燃していて「まだ読んでない作品を読んでみるか」ってことで続けて読んでみた。

『いっぺんさん』は2025年現在、実業之日本社文庫で文庫化しているけれど単行本での初出版は2007年なので、ざっと18年前の作品ってこと。なので現代とは少し違う部分(スマホじゃなくて携帯電話だったり)があるのは御愛嬌。

私の朱川湊人歴は『わくらば日記』からスタートしたので、実のところ朱川湊人の来歴とか作風についてはよく知らないでここまで来てしまったのだけけど、どうやら「ちょい怖かったり不思議要素の入った短編」を書くのが好きな作家さんのようだ。『いっぺんさん』も「ちょい怖い短編集」ってノリだった。

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いっぺんさん

ザックリとこんな内容
  •  怪奇と人情を描いたホラー短編集。
  • 昭和の大阪を舞台にした作品が多めで不思議な出来事と温かな人間ドラマが描かれる
  •  『磯幽霊』『八十八姫』などテレビ番組『世にも奇妙な物語』テイストな作品も。

感想

表題作の『いっぺんさん』は私の好みのド真ん中で泣いてしまうほど良かった。だけど収録作品が全部好きかと聞かれたら「そうでもない(真顔)」としか言えないのが残念。

1冊に収録作品が多いタイプの短編集って「全部好き」ってことはありえないのだけど『いっぺんさん』の文庫本は作品の方向性を絞っていないので、どっちを向いて読めばいいのか難しかった。

『磯幽霊』と『八十八姫』は大人向けの「ちょっと嫌な感じがするホラーテイスト作品であるのに対して『いっぺんさん』は昭和人情ハートフルホラー。方向性としては『花まんま』に収録されていた『トケピの夜』と似た感じの作品。

  • 昭和ノスタルジー
  • 少年同志の友情
  • 優しさゆえの切なさ

朱川湊人はこのあたりのポイントを抑えて話を書くのが上手すぎる。昭和の子どもだった今の40~50代がうっかり泣いちゃうヤツ。

逆に言うと人の悪意を前に出した作品はイマイチなのだ。『磯幽霊』『八十八姫』にしても悪意が入り込むタイプの作品なのに読後「うわぁぁ」と頭を抱えるほど嫌な気持ちにはさせてくれない。

『いっぺんさん』は朱川湊人の良いところと悪いところが一度に味わえる短編集である…と言えばそうなのだけど残念ながら「1冊の本」としての満足度はイマイチだった。

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