読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

私の最後の羊が死んだ 河﨑明子 小学館

記事内に広告が含まれています。

なにげに河﨑明子作品を読みまくっているけれど、私の中で河﨑明子熱が盛り上がってしまったから仕方外な。作者の河﨑明子は『ともぐい』で第170回直木賞を受賞している。

『私の最後の羊が死んだ』は河﨑明子が作家になるまでのエッセイ。私は河﨑明子の作品は好きだけど、彼女のバックボーンはほとんど知らず「北海道出身の作家で三浦綾子文学賞を受賞した人」くらいの知識しかなかった。

河﨑明子は酪農家に生まれ、ご自身も羊を飼っていた。羊を飼うと言ってもペットとしてではなく食肉としての羊を育てていたそうで『私の最後の羊が死んだ』は題名の通り、河﨑明子が羊飼いを辞めて専業作家になるまでのエッセイ。図書館でふわっと手に取って読んでみたけれど、あまりにも気に入ったので手元に置きたくて購入した。

スポンサーリンク

私の最後の羊が死んだ

ザックリとこんな内容
  • 直木賞作家、河﨑明子が羊飼いを辞めて専業作家になるまでの「作家前夜」を描いたエッセイ。
  • 酪農家の娘として生まれた作者は大学卒業後も農業に関わるつもりはなかった。
    だが大学時代に教授宅で催されたバーベキューで美味しい羊肉を食べたことがキッカケで「自分でも生産してみたい」と一念発起しニュージーランドへ羊飼い修行へ旅立つ。
  • 多くの人にも助けられながら、勉強を重ね、日々実直に羊を育て、出荷し、羊飼いとして収入を得られるようになるのだが…

感想

図書館で借りたのに自分でも持っていたくて買ってしまうほどに面白かった。たぶん…だけど荒川弘の『銀の匙』とか『百姓貴族』が好きな人は楽しく読めると思う。

とりあえず私は河﨑明子が酪農家の家に育った…ってことも知らかったし、彼女自身羊を飼って生計を立てていたことも知らなかったので、これまで読んできた作品の背景が見える気がして納得した。

河﨑明子の作品は動物の描き方が妙にリアルで他の作家さんとは何かが違うと感じていたのだけど、そりゃ違うわ。彼女が生きてきた背景もそうだし生き物と向き合う姿勢が違う。

普通の人は羊を動物としか認識していないけれど、河﨑明子は羊を経済動物として向き合っていた。経済動物(けいざいどうぶつ)とは、肉や乳、卵、皮などの生産物や労働力などを利用するために飼育されている動物のことでペットとは違う。

私が子どもの頃「夜店で釣ったひよこを大切に育てていたところ、学校から帰ってきたら同居している祖父が大切にしていたニワトリを絞めて肉にしていた」みたいな話を聞くことがあった。悲しい話ではあるものの、人間は雑食なので動物を食べて生きている。私自身、牛も豚も鶏も魚も大好きで美味しく戴いている。

まず驚いたのは河﨑明子バイタリティとガッツ。単身、ニュージーランドに行って働きながら羊の飼い方を学び、帰国して自分も羊を買い付けて繁殖させている。なんか色々と凄い。

河﨑明子の羊飼いとしての日々については本を読んでいただくしかない訳だけど、羊飼いターンの他にも、お父様の介護の話なども出てきて「なるほど…それで介護がテーマの小説を書いたのか」と納得した。(河﨑明子の『介護者D』は未読なので読んでみたい)

エッセイではあるもののお気楽エッセイ…と言うよりも自伝に近いノリなので河﨑明子の小説が好きな人は読んでおいて損がないと思う。読んだ勢いで感想を書いているけれど、何度も読み返したい作品。このエッセイのおかげで私は河﨑明子がますます好きになった。

50音別作家一覧はこちら

作家名・作品名等で検索出来ます
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました