ずっと気になっていた『銀のステイヤー』をやっと読んだ。河崎明子の作品はデビュー作からちょいちょい読んでいるけれど当たり外れの激しい作家さんって印象がある。
今のところ河崎明子作品の中では『颶風の王』が私の中で優勝なのだけど『銀のステイヤー』も『颶風の王』と同じく馬をテーマにした作品なので、どこか期待しつつも「また、ハズしちゃうのか？」と言う気持ちも半分で挑んだ。
銀色のステイヤー
- シルバーファーンは北海道、日高の競走馬生産牧場で「幻の三冠馬」と呼ばれた父馬・シダロングランの血を引いて産まれた。
- 牧場長の菊地俊二はシルバーファーンの身体能力に期待をかけつつも、性格の難しさに課題を感じていた。しかも最も懐いている牧場従業員のアヤが問題児であることも、悩みの種だった。
- シルバーファーンの馬主となったのは広瀬という競馬には詳しくない未亡人。茨城県・美浦にある厩舎を擁する二本松調教師とともに牧場を見学に訪れ購入を決めた。
- 不安を覚える調教助手の鉄子（本名：大橋姫菜）に、二本松は担当を任せる騎手は俊二の兄である菊地俊基騎手と決まった。
感想
まったくもって個人的な意見だけど河崎明子は、あまり凝り過ぎた作品より素直な作品の方が面白気がする。熱を入れて書いただろう超大作ほど途中でトンデモ展開になったり謎過ぎる設定を突っ込んできがち。その点『銀のステイヤー』は現代設定でかつ競馬と言う実際にある物を描いた作品なので、トンデモ展開や謎過ぎる設定が入ってこなくて読みやすかった。
ありがちな話だけど、私はスマホゲームの『ウマ娘』をキッカケに競馬に興味を持つようになった。『ウマ娘』を引退した後も、テレビで競馬中継を観ることもあるし中継を観る時は馬券も買うニワカ競馬ファン。なので『銀のステイヤー』で描かれた気性難の馬が成長していく過程と馬と共に成長する人間の姿にグッときてしまった。
ダブルヒロイン方式…とまではいかないかも知れないけれど『銀のステイヤー』の中ではアヤと鉄子の成長が丁寧に描かれていた。作者が女性…ってこともあるかも知れないけれど河崎明子の作品は主人公が女性の方が生き生きしている気がする。
イッキ読みできる面白さだったし読後感も爽やかで良かった。
それにしても。競馬をテーマにした小説って、どれもこれも面白くて大きく外したことがないのが不思議だ。少なくとも今まで読んだ競馬小説の中で「箸にも棒にも掛かりませんでした」って作品は1作も無い。
『銀色のステイヤー』の感想とは直接関係の無い話だけど、河﨑明子はやはり凝り過ぎた物語よりもド直球な物語を書く方が向いている気がする。河﨑明子にはドロドロ系の作品よりも『銀色のステイヤー』のような素直な作品を書いて戴きたいなぁ～と思った。
