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サンショウウオの四十九日 朝比奈秋 新潮社

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『サンショウウオの四十九日』は第171回芥川賞受賞作。作者の朝比奈秋は医師とのこと。ちょっと難しい題材だったけれど、めちゃくちゃ面白かった。「芥川ってのは、こう言うのでいいんだよ」と思うほどに。

テーマとしてはありがちではあるものの、他の小説や漫画とは全く似ていない新しい視点、新しい思考の物語だった。

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サンショウウオの四十九日

ザックリとこんな内容
  • 結合双生児が主人公の物語。
  • 1つの身体を共有する結合双生児、杏と瞬。結合双生児は様々なタイプがあるけれど、彼女たちは頭部も内蔵もすべて1つずつ。
  • 人間の意識と肉体。死とは何か? 結合双生児達の視点で語られる。

感想

結合双生児の物語…と言うと日本の古きヲタクは萩尾望都の名作マンガ『半神』を思い浮かべると思う。私もその通りで「芥川賞、受賞作のテーマは結合双生児なんだって」と知った時「半神みたいなヤツかな?」と想像していたけれど、まったく違ってた。

結合双生児と言うと腰で身体が引っ付いているベトちゃんドクちゃんを連想する人が多いと思うのだけど、杏と瞬は古きアニメ作品『マジンガーZ』に出てくる‘あしゅら男爵’のように身体は1つだけど意識(DNAも)が2つある…と言う形の結合双生児だった。

「身体が1つしかない結合双生児」と言う設定だけでもぶっ飛んでいるのに、杏と瞬の父親も双子で父親は自分の兄の身体から「胎児内胎児」として生を受けている。父と叔父、そして杏と瞬。2組の双子の物語とも言える。

さて。ぶっ飛んだ設定の中で『サンショウウオの四十九日』で書かれたことは何だったのか?

  • 心と意識と身体の関係
  • 生と死とは何なのか?
  • 肉体の死と意識の死とは?

……言うような人間ならば誰でも1度は考えてしまうような話。私も子どもの頃からずっと「死んだらどうなるんだろうか? 私の心(魂的な何か)はどこへ行くんだろうか?」ってことを考え続けていた。もちろん答えなんて出るはずがないんだけど。

面白かったのは「自分の思考(意識)は自分だけのものである」って考えは傲慢である…と言う解釈。確かに、ものすご~く広い意味で考えていくと自分の思考と言っても様々な物に影響されている訳で、突き詰めてみれば自分1人の思考ではないな…などと思ったりした。

実のところ私自身『サンショウウオの四十九日』の内容を100%理解できた訳ではないけれど、人間の根本的な悩みを考えるキッカケにはなった。

「そんな面倒くさい小説なんて読んでられないな」と思った人も安心して読んで戴きたい。そんなに堅苦しい文章ではないし、そもそも結合双生児の設定等がぶっ飛んでいるので、そっちメインで読んでも十分面白い。

朝比奈秋。初めての作家さんだけど、これから気をつけてチェックしようと思う。

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