最近、貧困をテーマにした小説を読みガチだけど『渇水』は水道料金未払から水道停止をテーマにした短編小説。ものすごくリアルで後味の悪い作品だった。
併録作品はどれもこれも後味が悪いのだけど秀作と言うかなんと言うか。「広く読まれて欲しい」と感じた作品ではあるもののも、後味が悪いので「ちょっと読んでみてください」とグイグイとオススメできないのが辛いところだ。
ちなみに2023年に映画化されているとのこと。ちなみに『渇水』は1990年に発表されているのでざっくり30年前の話…ってことになる。30年経った今でも人間社会は同じことを繰り返しているのかと思うと微妙な気持ちになるものの、骨太の作品は時を越えて評価される…とも言える。
盛大なネタバレは避けたいけれど、軽く匂わせ程度のネタバレはしてしまいそうなので「ネタバレには一切触れたくない」って方はご遠慮ください。
渇水
- 市役所の水道部に勤務し水道を止める「停水執行」を担当する岩切は3年間支払いが滞っている小出秀作の家で秀作の娘・恵子と久美子姉妹に出会う。
- 小出の妻は不在、秀作も長いあいだ家に戻っていなかった。
- 姉妹との交流を重ねていく岩切だったが……
感想
作者の河林満は元水道局員とのことで『渇水』は自らの体験や知識をベースに書かれているとのこと。だからこそリアルで感じが悪い。私は河林満って作家のことを全くこ知らなかったのだけど、芥川賞候補にもなっているとのこと。残念ながら既に57歳で亡くなっているので、新しい作品を追いかけることは出来ない。
河林満は社会的弱者をテーマにした作品をいくつも残していて、なんかこぅ…あらすじを調べてみるだけでも、後味が悪くて嫌な気持ちになる。
正直『渇水』はあまりにも救いがなさ過ぎるラストに絶望した。作家、河野多恵子もこのラストを嫌ったとのこと。河野多恵子の文学方向性から考えると「いや。それを貴女が言うのは意外ですよ」って気持ちで一杯になったものの、河野多恵子が女性であることを思えば分からなくもない。
……とは言うものの「現実を描く」と言う意味では素晴らしいと思う。だからと言って社会派小説…ってノリでもなくて、文学ちっくなのも良い。
後味の悪い作品ではあったけれど、私は面白いと思ったし作者の書いた他の作品も読んでみたいと思った。そして2023年に公開された映画も観てみたい。
本好き…と言っても、知らない作家さんや作品はまだまだ沢山あるのだなぁ~と改めて感じた作品だった。