これはいけません。まだ今年は半分も終わっていないのに、もしかしたら今年度1番に刺さる作品を読んでしまったかも知れません。
ただし、この『ヘイケイ日記』。読者を選ぶタイプの作品なので誰も彼もにオススメすることは出来ない。だけど更年期真っ只中の女性、これから更年期に立ち向かおうとしている女性には刺さるところが多い気がする。
更年期や閉経を扱った小説やエッセイって、大抵の場合「更年期シンドイ」「更年期辛い」みたいなネガティブな話になりがちだけど『ヘイケイ日記』は至って不真面目で面白い。
あと男性の描かれ方は至って残念なので、男性にはオススメしない。
ヘイケイ日記
- 1971年生まれの作者、花房観音が贈る閉経前後がテーマのエッセイ。
- エロを描き続けてきた作者独特の視点で女の性を描く。
- 下のグレイヘア問題。男の自慢話をいつまで聞いてあげるべきか。死ぬまでにあと何回「する」のか…等。
感想
自分で申告するのもなんだけど、私は花房観音より1歳下の同世代。閉経を意識しちゃうお年頃だ。
更年期とか閉経を扱った作品って、とにかく陰気なものが多い。そうじゃない場合はスピリチュアル系とか妙に意識高い系とか。「なんか面倒くさいなぁ~」って感想しか出てこなくて、その類のテーマは避けてきたのだけど『ヘイケイ日記』はなかなかイカしていた。
特に気に入ったのはこの一節。
子宮は人間の臓器のひとつです。女の身体の中に、パワースポットはありません。
ヘイケイ日記より引用
ホントそれ。ホントそれだよ!!!
私はこの夏50歳になる。人の言葉を受け止めるのが下手クソで随分と損な生き方をしてきたけれど、年を重ねる毎に他人から向けられる嫌な言葉を受け流せるようになったものの、女性の性を特別視する感じは未だちょっと違和感がある。
妊娠・出産・更年期。色々あるけど特別どうこう…って話じゃない。
花房観音自身は既婚だけど出産経験はないとのこと。若い頃から容姿について散々嫌なことを言われ続けていて、結婚後も「子ども産んだ方が良いわよ」と言われ続けてきたようで、なんだか妙に親近感を覚えてしまった。
世の中の人は他人の人生に興味があり過ぎるし、お節介が過ぎると思う。
「だからって、鬱々と陰気に生きていはツマラナイよね?」って問いかけをしてくるのが『ヘイケイ日記』の面白さだと思う。
閉経を前にしてレズ風俗に行ってみたり、ストリップショーを観に行ってみたり。
花房観音が閉経前後の日々を実に楽しそうに生きている様子が読んでいて楽しかった。『ヘイケイ日記』は人生の役には立たないけれど、元気をチャージ出来る作品だと思う。ただし読む人を選ぶので、そこのところは自己責任で。