この作品はとにかく題名が素晴らしい。とりあえず題名だけで「何だこりゃ?」と興味をそそるので、山崎ナオコーラのセンスはたいしたものだと思う。
内容は…と言うと、挑発的な題名からは想像もつかないほど、シンプルな恋愛小説だった。
今回はネタばれを含みますので、ネタばれが嫌いな方はスルーしてください。
人のセックスを笑うな
19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた…
美術専門学校の講師・ユリと過ごした日々を、みずみずしく描く、せつなさ100%の恋愛小説。
アマゾンより引用
感想
美術専門学校に通う19歳の若者と、その学校で講師をしている39歳の人妻との恋物語。
渡辺淳一や江國香織に描かせたら39歳の人妻は匂い立つような美女だったと思うのだけど、ものすごく普通の「いけてないオバチャン」で、ちょっとリアルな感じが面白いと思った。
もっとも、ただの「いけてないオバチャン」では小説にはならない訳で、そこはちゃんと普通と違っていて、19歳が39歳に振り回される。
作品は19歳の視点で描かれているのだけれど「19歳の若者が、そういうとこ見るかなぁ?」と突っ込みたくなったのは御愛嬌ってところだろうか。
「恋ってそんなもの」と言ってしまえば、そうなのだけど、19歳男子の視点と言うよりも「女って、こんな風に見て欲しいのよ」と言う女性の視点を感じずにはいられなかった。
恋愛小説としては悪くないんじゃないかと思うのだけど、それにしてもラストの別れ方が酷い。
酷いって言うのは「作品的に」って意味じゃなくて、「人として」って意味で。結局のところ、この恋は19歳が捨てられる形で終止符を打つのだけど、別れ方が曖昧で19歳の若造はトドメを刺してもらえなかったのだ。
もし、私だったら、きっと一生引きずってしまう。
恋の終わりは、たとえその時どんなに辛くても「捨てる側からトドメを刺す」のが礼儀だと私は思っているのだけど、こればかりは好みの問題ってことなのだろうか。
ともかくトドメを刺してもらえないまま恋が終わってしまったことによって、作品に余韻が生まれたのも事実だ。
気持ちの良いラストとは言えないまでも「まぁ…可愛そうだけど、主人公はまだ若いし立ち直りも早いだろうしね」と思わせて終わったところが上手いと思った。その辺のさじ加減がとても良い。
しかし「心に残るってほどの作品でもなかったな」ってのが正直な感想。
ものすごく読みやすい文章だし、長い作品でもないので2~3時間もあればサラッと読めてしまう。
読後感もさほど悪くはないのだけれど、ガツンと響く物が無かった。悪くはなかったけれど、色々と物足りない作品だった。