東京の友人が「君ならきっと気に入るはずだ」と、わざわざ送ってくれた1冊である。
レズビアンを主人公にした、エロ・SM・コメディ小説といったところだろうか。かなり下世話な作品なので「好きだ」という人よりも、そうでない人の方が多いんじゃないかと思う。
読者を選ぶ作品であることに間違いはない。森奈津子の作品は過去に2冊ばかり読んだことがあるが、中でもこの作品日のコメディ度はかなり高いと思う。
姫百合たちの放課後
「ああ、静香お姉様!気高く清らかな白百合!わたくしがあなたを守ってさしあげます!」―サディストの魔手が迫る美しき先輩・静香の純潔を守るため、一計を案じた女子高生・純子の奮闘を描く表題作、オリンピック正式種目となった“自慰道”に懸ける青春「花と指」、地球外生命の侵攻から人類を救うレズビアニズムの奇跡「2001年宇宙の足袋」など、可笑しくも甘酸っぱい全9篇を収録する“百合コメディ”作品集。
アマゾンより引用
感想
私はエロもSMもコメディも大好きなので、かなり笑わせてもらったが、心に残る作品だとは言い難い。残念だが読み捨て作品としか思えなかった。
これはまったく個人的な趣向なのだが、私は漫画に「コメディ」を求めても、文章に「コメディ」は求めていないのだ。
まったく同じ内容でも漫画だったら、もっと面白く読んでいただろうしインパクトも強かっただろうと思う。
それと、もう1つハマれなかった原因は、似たような展開の作品ばかりがズラッっと並んでいたところにあると思う。
これは森奈津子の問題ではなくて編集サイドの問題だと思う。読む人を限定した出版物なだけに、どうしてもこういう形になるのは仕方のないことなのかも知れないけれど。
ただ唯一「流石だなぁ」と思ったのは、吉屋信子の流れを汲む「エスの世界」と、過剰過ぎる「お嬢様言葉」が本物だったという点である。
今をトキメク嶽本野ばらでさえ、森奈津子の足元には及ばない。本物の実力か、それとも女性ゆえの強みか。
ここまで遊んでくれれば拍手喝采ものである。
コメディにそこまで求めるのは酷かも知れないが「読み捨て」ではなく、再読に耐えうる作品でないと、読み継がれていくのは難しいのではないかと思う。