NGO団体で働く女性と、プロの人道支援者男性の物語。
コソボ、コンゴ、ニューヨークが舞台になっていて「世界」を感じさせてくれる作品だった。
一応、小説という事になっているけれど、小説としては少し弱い印象。ジャーナリストが書いた小説ということを頭において読んだ方が良いと思う。
ここを出ろ、そして生きろ
目の前の誰かを救うためNGO活動に没頭しながらも、戦後利権に群がる民間組織の現実に戸惑いを覚えるさゆり。より危険な道を選ぶことでしか「生」を実感できない焦燥感に悩む、プロの人道支援者ジャン。
コソボ、コンゴ、NY、エルサレムを舞台に、生死の境界を往く恋人たちの壮絶な闇を追った、渾身の長編小説。
アマゾンより引用
感想
世界の情勢や現実を知りたいのなら、ノンフィクションのエッセイや評論を読んだ方がずっと良いとは思うのだけど、こういう形で知るのもアリではないかと思った。
新聞やテレビのニュースでは感じる事の出来ない人間の悲しみが描かれていて、読んでいて心が痛んだ。
世の中には悲しい事なんて掃いて捨てるほどあるし、恵まれている(と思われる)日本でさえ、皆が幸せである訳ではない。しかし、戦争や紛争が起こす悲劇は、次元が違う哀しみに満ちている。
正直なところ、突っ込みたい部分がたくさんある作品ではあった。
恋愛小説としても成長小説としても「そりゃ、ないわ」的なところもあったけれど、それ以上に引き込まれる物があったし、世界情勢に疎い私には良い勉強になった。
……とは言うものの、この作品を読んだからって「私も世界の紛争を無くすために何か支援をはじめよう」とは思わない。
私には私の生活があり、ささやかながらも守るべき物がある。しかし、どんな事でも「知っている」のと「知らない」とは大違い。
世界で起こっている事にもう少し目を向けていかなくちゃいけないなぁ……とは思った。その上で自分の置かれた状況を見るとき、今までとは少し違った物の見方が出来るような気がする。
こういう小説がもっと増えて世の中に広まってくれると良いのになぁ…と思った。機会があれば作者の他の作品も読んでみたいと思う。