第119回の芥川賞受賞作。
舞台は鄙びた温泉旅館。社交ダンスをするためのホールがあって、社交ダンスツアーを生き残りの道としている旅館で働く若い男が主人公だった。
題名を見て、なんとなく手に取ったのだけど、日本が舞台で面食らった。
なんとなくアルゼンチンで暮らす日本人の話かと思っていたので。
ブエノスアイレス午前零時
雪深いホテル。古いダンスホール…地方でくすぶる従業員カザマは、梅毒と噂される盲目の老嬢ミツコに出会う。あ
る夜、孤独な彼がミツコを誘い二人でタンゴを踊る時、ブエノスアイレスにも雪が降る。ベストセラーとなったリリカル・ハードボイルドな芥川賞受賞作。
アマゾンより引用
感想
主人公の男性は「自分の居場所」に違和感を覚えているタイプ。
客としてやってきた盲目の呆けた老婆との物語なのだけど、まぁ悪くはない。悪くはないけど、良くもない。ラストで主人公と老婆はダンスホールでタンゴを踊る。
ものすごく美しくてロマンチックな設定なのに、なんだかちっともロマンチックではなかったのだ。
たぶん主人公は卑屈なくせに「自分大好き人間」だからだと思う。
痴呆老人が登場する作品は山ほどあるけれど、この作品の場合は痴呆老人とペアになる主人公が、何気に上から目線なので共感を得にくいのだ。
この本にはもう一遍『屋上』という作品も収録されている。
こちらは百貨店の屋上で働く若い男の話なのだけど、こちらの主人公もイマイチ好きになれなかった。若者らしさがないと言うか、爽やかさが無いと言うか。
ひと言で説明すると「なんかダルい」って感じなのだ。
私には合わなかったけれど「けだるい感じ」の作品が好きな人は面白いかも知れない。悪くはないのだけどなぁ。説明し辛いのだけど、どうにも好きになれない1冊だった。
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