パートに行くようになってから、毎日刺激的で楽しいことが沢山ある。
専業主婦になるまで働いてきた業界と全く違う職種なので、異文化交流のために違う部族に放り込まれた人みたいな気持ちになっている。
私の働いている職場が特殊なのか、それとも業界全体の雰囲気がそうなのかは分からないけれど、放課後デイサービスで働く人達は心優しい人が多い気がしてならない。
先日、教材や玩具を作る会社の人が営業にやって来た。
私は下っ端のパート戦士に過ぎないのだけど「白蓮さんも一緒に話を聞いて、良いものがあれば言ってください」と上司に言われたので、私もその場に同席させてもらった。
営業さんは社会人1年目の新人さん。はじめての営業活動とのこと。
どうやら療育にも使えるプログラミングロボットを売りたいようなのだけど、私の働く放課後デイサービスはどちらかと言うと、重度の障害を持つお子さんが多くてプログラミングロボットなんて全く必要がない。
「営業に来るなら営業先のHPくらいチェックしとけよ!」
……とは言わなかったけれど、内心ではイライラして聞いていた。しかし上司はまったくもって穏やかな調子で話を聞いていて、丁寧に営業マンに説明していて「この人、菩薩か何かなの?」と驚愕。
だけど私は「200%買う気のない商品の話を聞くのって時間がもったいない」と思っていて、上司が席を外す時に「後はよろしく」と言われたのを良いことに「触覚・音・視覚に訴える玩具が希望です。うちにプログラミングロボットは必要ありません」とキッパリ言ってしまった。
「えっと…ニーズに沿った物もございます。えっとですねぇ…」と、ようやく話が少し進み、最終的には「カタログを見て気に入ったものがあれば発注する」「ニーズに沿った新商品が出たら連絡して欲しい」と言うことで、話が終わった。
なんなの、この業界?
今までいた業界であんな暢気な営業が来たら、秒速でお引取り戴いていたと思う。
私。今の職場で働くようになってから、自分はものすごく意地の悪い人間じゃないかと思うようになっている。
今回のエピソードは今の職場の一部でしかないけけど、一事が万事こんな感じで進んでいく。
福祉の職場だからなのか、それともたまたま私が働いている放課後デイサービスの人達が良い人揃いなのかは判断出来ないところだけど、毎日驚きの連続だ。
ちなみに私の上司は「お寺の若住職」みたいな雰囲気の人で、徳のありそうな雰囲気が漂っているし、正社員の女性職員さんにしても息子の嫁にしたい感が半端ない。
私…こんな良い人達の中でやっていけるんだろうか?
汚れちまつた悲しみに、戸惑うばかりの毎日である。
……そう言えば中原中也の『汚れつちまつた悲しみに……』は今の季節に読むとジャストミートなので、参考までに置いておきます。
汚れつちまつた悲しみに……
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘かはごろも
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠けだいのうちに死を夢む汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気おぢけづき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠のうちに死を夢む汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……中原中也 山羊の歌より