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菊日和 津村節子 講談社

ここのところ、本のアタリが良くなくて「手堅く面白いものを読みたい」と思って、この作品を手に取った。

私は津村節子の大ファンで著作は、ほぼコンプリートしているのだが、それでも近年の作品はあえて手付かずのままにしてあったのだ。

好きな作家さんの作品って、ついつい読み尽くしたい衝動に駆られるが、読む本に行き詰まったときのために、大好きな作家さんの作品は、2つ3つ読み残しておくと良いかも知れないなぁ……と思っている。

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菊日和

弟の月命日に墓参りをした恵は、墓前に皮を剥かれた蜜柑があるのを見た。

柑橘類が好きだった弟への妻・美也の思いやりと思っていたが、そうではないと知り、ひそかなわだかまりを感じる。

「菊日和」他、必ずしも幸福ではなかった死、誰の胸にもある奥深く秘められた物語を、静かな筆致で描きあげる傑作6編を収録。

アマゾンより引用

感想

津村節子は短編小説の名手とされているが、今回の本も短編小説集だった。

主人公は全員女性。家庭画報に登場するようなブルジョアジーの女性から、平凡な女性までバラエティにとんでいて、痒いところに手が届く女性の描き方は、女性作家さん特有のものだなぁ……と毎度がら感心した。

ただ、今回は全般的にキレがなくて、少々物足りない作品が多かったように思う。

地味過ぎたり、そうでなければ話を作り過ぎて、あまりにも嘘っぽい感じがしたり。

奇抜な内容を扱った作品よりも、じっくり堅実な作品の方が面白いように思うのになぁ。

しかし表題作になっている『菊日和』は良かった。

この1篇だけで良かったかも知れないと思うくらいに。人の死と、ちょっとした謎と、新しい希望とが、ちょうど良い感じでミックスされていて謎を残した人物(ネタバレになると興ざめなので伏せておきます)の生きざまの良し悪しよりも「生きてると、やっぱ良いことあるよね」と思ってしまうような気持ちの良いラストだった。

「めでたし。めでたし」ではなかったし、軽く痛みを感じる作品ではあったのだけれど、なんか許せてしまうのだなぁ。

たぶん、これは津村節子の術に、まんまと引っかかってしまったからだとち思うけれど。

それにしても、作者は「死」を書くのが上手い。

それもお涙頂戴とか、大それた生死観とか、そういうのではなくて、あたりまえのように一緒に暮らしていた人、あるいは一緒に働いていた人が、ある日突然、神隠しにあってしまうような、唐突で、あっけない死や、人生の一大事というのではなくて、単なる「通過点」としての死を書かせたら、たまらなく上手い。

物語の中に「生と死」が登場すると、とかくドラマティックになりがちだけど、現実は彼女の描くような形の生や死が多いのではないかと思う。

もちろん現実世界には小説をしのぐようなドラマがあるのも事実だけれど。

心にズンときたのは1篇の作品だけだったが、それでも手堅く良いものを読ませてもらって、ちょっと得した気分だ

。やはり私は、津村節子の書く小説が好きなのだと再認識した。

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白い木蓮の花の下で
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