非常にローテンションなエッセイ集だった。
河野多恵子の日常生活や、好きな作家(谷崎・三島・菊池)についての自論など。
何故だかしら、河野多恵子とは仲間意識のようなものを感じてしまう。このエッセイ集にいたっては、今年度の「マイ・ベストエッセイ」になるんじゃないかと思われる。
カッチリとした文章とテンションの低さが、素晴らしく魅力的である。老年期の作家さんにしては、老人臭さが感じられないところも好印象。
枯れた風情を保ちつつ、いまだ現役……といったところだろうか。
思いがけないこと
楽しみたいから読む。作品が誕生する奇蹟感がこたえられないから書く―。“…ねばならぬ”“…すべき”が性に合わない作家の、10年ぶりのエッセイ集。言葉について、NY暮らし、谷崎のことなど61編。
アマゾンより引用
感想
私が河野多恵子に「仲間意思」を感じてしまうのは、たぶん河野多恵子が「どうしようもないほど小説を読むのが好き」な人だからだと思う。
このエッセイ集では「小説という形にこだわっている」というようなことが書かれてあった。
河野多恵子は「小説の次の爛熟期が必ずあり得ると、信じられてならない」という言葉でエッセイ集の最後を飾っているけれど、それにつていは、私もまったく同意見である。
私は、毎日飽きもせずに本を読み漁り「ツボではないかっ」「詰まらなかった」「悪くはなかったが、ここはいただけなかった」とて、文句ばかり言っているような気がする訳だが、文句を言いつつも読んでいるのは、小説が好きだからに他ならない。
本を読むことで「何かをになりたい」とか「何かを得よう」とか、そういうこと思っていないのだ。好きだから読む……これに尽きる。
図書館で借りた作品だが、是非とも購入したいと思う。何度も読み返したくなるような、上質な読み物だと思った。