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緑の毒 桐野夏生 角川書店

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期待通りの桐野節炸裂の作品だった。

実に感じの悪い1冊。桐野夏生って本当に「嫌な奴」とか「感じの悪い奴」を書くのが上手い。上手過ぎると言ってもいい。

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緑の毒

39歳の開業医・川辺。妻は勤務医。一見満ち足りているが、その内面には浮気する妻への嫉妬と研究者や勤務医へのコンプレックスが充満し、水曜の夜ごと昏睡レイプを繰り返している。

一方、被害者女性たちは二次被害への恐怖から口を閉ざしていたがネットを通じて奇跡的に繋がり合い、川辺に迫っていく―。

アマゾンより引用

感想

連続レイプ犯は医師。そしてレイプ犯の妻も医師でしかも不倫中ときたもんだ。

その周囲を取り囲む女達もリアルに嫌な感じ。気持ちを添わせる事の出来る人なんて1人もいなかったし、どの登場人物もすべからく嫌な感じ。

ここまで感じの悪い人ばかり出てくる作品は珍しいし、そこが良いと思う。

本を読む楽しみは色々あって、無性に泣くも良し。素敵な恋愛にキュンキュンするも良し。人生を考えてみもいい。

そして「自分は絶対に経験しないことを疑似体験する」というのも1つの楽しみだと思う。

もちろんこれは「楽しめたら」の話。この作品の場合は、トコトン感じが悪いので楽しめない人も多いと思う。

けっこう面白かったのだけど、登場人物が多すぎて、一人一人の掘り下げが甘いのと、いささか投げっぱなしな感じのするラストはどうかと思った。

レイプされた女達の復讐はどうなっていくのだろう?

「細けぇこたぁ、いいんだよ」とは思えなくて、ちょっとモヤモヤしてしまった。

桐野夏生の作品って「作者は心底楽しんで書いているんだろうなぁ」って空気が伝わってくるのが好きだ。実際にどうなのかは、もちろん読者が知る事はないのだけれど。

もしかしたら、私は桐野夏生作品のそういうところが好きなのかも知れない。

ちょっと物足りない部分もあったけれど、それなりに楽しめた1冊だった。

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