相変わらず桐野夏生は面白いなぁ。お流石でございます!
桐野夏生に会って話をするチャンスなんて死ぬまで無いと思うのだけど、もし桐野夏生に会えたら聞いてみたい。
「いつも、さも見てきたかのように書いていますが、あれは頭の中で生まれるんですか? それとも取材しまくってるんですか?」と。
路上のX
幸せな日常を断ち切られ、親に棄てられた女子高生たち。ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネス。かけがえのない魂を傷めながらも、三人の少女は酷薄な大人たちの世界をしなやかに踏み越えていく。最悪な現実と格闘する女子高生たちの肉声を物語に結実させた著者の新たな代表作。
アマゾンより引用
今回のテーマは女子高校生なのだけどJKビジネスをしながらマクドナルドやカラオケボックスで寝泊まりするような子達が登場する。
特殊な世界だと思うのだけど「私、見ちゃったんです」みたいな感じに描かれていて、読んでいてとてもリアルに感じる子とが出来た。
実のところ作品で描かれた女子高校生達の生態が正しいかどうかなんて、よく分からないし確かめる術もない。
だけど不思議と「そうなんだろうなぁ」と思えてしまうのが桐野マジックだと思う。汚い大人に喰い物にされながらも、逞しく生きていく女子高校生達の姿が生き生きと描かれていた。
桐野夏生の凄いところは、社会的弱者を主人公に持ってきても道徳的な感情を一切排除しているとこだと思う。
ほとんどの作家さんは「この現状を知って欲しくて」みたいな部分が多かれ少なかれあって、うっかりすると作品が説教臭くなるのだけれど、桐野夏生の作品にはそう言うところが全く無い。
ただ物語が進んでいくだけで、そこの作者の個人的な意見は含まれていない(ように見える)のが素晴らしいと思う。
もちろん、そんな事は桐野夏生自身に聞いてみないことには真実は分からないけれど、少なくとも説教臭くもなければ道徳的でもないところが桐野夏生の良さだと思う。
『OUT』では中年女性を、『魂萌え!』では高齢女性を描いた桐野夏生が、今回は女子高校生を描いた訳だけど、この3作品は登場人物の年代こそ違うものの「女の強さと友情」を描いたと言う意味では1本の線で繋がっているように思う。
桐野夏生の描く女の友情は意外とドライでベタベタしていない。
登場人物達は全員身勝手で自分本位だけど芯が通っていて、互いを信頼しているところが好ましい。
今回の作品は登場人物が未成年。私は親目線で読んでしまったため、ちょっと辛いものがあった。
だけど世の中には悪い大人、悪い親がいるのは本当の事だし、作品に出てきた女子高校生達のような生活を送っている子がいるのも容易に想像出来る。
唯一の救いはそれでも彼女達は強く生きていくだろうな…と言う予感が出来ることだ。
なんだかんだと面白くて一気に読んでしまった。次回作も期待したい。