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ボロ家の春秋 梅崎春生 講談社文芸文庫

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最近、軽い目の本……もとい、私がサクサクと読めるタイプの本が続いていたので「ちょっと真面目なのをいっとく?」と思い立って選んだ1冊だった。

典型的な純文学と、エンターティメント系の小説に優劣があるとは思っていないが、生粋の純文学は読みにくく、とっつきにくい作品が多いのも事実だ。

読みにくいからこそ、小説は漫画に押され気味になっていったのだろうが、読みにくいからこそ味わえる良さもある訳で、その辺の判断は微妙である。

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ボロ家の春秋

「桜島」「日の果て」などの戦争小説の秀作をのこした梅崎春生のもう1つの作品系列、市井の日常を扱った作品群の中から、「蜆」「庭の眺め」「黄色い日日」「Sの背中」「ボロ家の春秋」「記憶」「凡人凡語」の計7篇を収録。

諷刺、戯画、ユーモアをまじえた筆致で日常の根本をゆさぶる独特の作品世界

アマゾンより引用

感想

この作品は夢中になってグイグイ読めるタイプのものではなかったけれど、燻し銀的な面白さがあって、なかなか良かった。

なんと表現したら良いのかなぁ……飄々とした作風が、昔っぽいのに何気にお洒落っぽいのだ。

戦後の日本が背景になっているし、庶民生活を描写したものなのに、どこか「切羽詰まってない感じ」がして、安心して読めると言うか、楽しめると言うか。

私が大好きな作家である遠藤周作の作風に、少し似ているような気がした。

実際のところは、遠藤周作が梅崎春生に似ていると言った方が正しいのだと思う。

作者は遠藤周作が敬愛していた作家さんとのことだから。もちろん似ているというのは、模倣ではなくて「感覚的に通じる部分がある」というだけのことなのだが。

やっぱり。いいね。切れすぎず、切れのある作品って。

地味に長く読み次がれていくタイプの作品のように思うのだが、やや地味すぎる感はあったけれど。「普通っぽいのに普通じゃない」というのが本当に凄いのかも知れない。

私は浅田次郎的な「狙いすましたアザトさ」が匂う作品も好きだが、こういう、正統派の作品も残っていって欲しいなぁ……と思う。

……実際は、学校の教科書や、受験問題などに使われて、あっさりと読み捨てられていきそうな気もするのだが。

なんにせよ、こういう作品にも触れておきたいなぁ……と思った。

自分への自戒を含めて。世の中には、面白い読み物がゴロゴロと転がっているのだろう。ただ見つけていないだけ、出会っていないだけのことで。

「秀作」と呼ぶに値する1冊だったと思う。

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