絵画をテーマにした絵画ミステリって、すっかり原田マハの十八番になってしまった気がする。
今まで作者の来歴なんて気にした事がなかったのだけど、原田マハは小説家として活躍されるまでは美術館で働いていたとのこと。
美術館のキュレーターの仕事について詳細に書けるのはご自身の経験からなんだなぁ…と納得した。
今回のテーマはピカソのゲルニカ。『楽園のカンヴァス』でもピカソは登場しているので、原田マハ自身、ピカソが好きなのかな…と思ったりした。
ピカソの絵が好きな人、ピカソは好きじゃなくても、ピカソの絵画が好きな人なら面白く読める作品だと思う。
暗幕のゲルニカ
一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。
手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして2 0世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。
国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した―― 誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか?
アマゾンより引用
感想
今回も主人公は美術館のキュレーター。
作品が描かれた時の話と、現代の話とが絡み合って出来ている。過去編のメインはピカソとピカソの周辺にいた人達の物語。
現代編はニューヨーク近代美術館(作品中で省略形のMoMA美術館と表記されている)でキュレーターとして働く瑤子と言う女性が主人公。
ピカソがゲルニカを描くに至った経緯や、ピカソのゲルニカを政治的に利用したいと考える人達などが絡み合って、なかなか読み応えのある作品に仕上がっている。
映画とか2時間ドラマ向けの作品だと思う。話の内容がすっごく濃い。
ピカソとその愛人の話、ゲルニカにまつわる話、そしてニューヨークで起こった9.11(主人公瑤子は9.11で夫を亡くしている)の話。
とにかく様々な要素がギッシリ詰め込まれているのだ。
面白いと言えば面白いのだけど、登場人物の誰かに肩入れして読んだりするようなタイプの作品ではなく、物語で読ませるタイプの作品だと思う。
ピカソについての物語は、あくまでも芸術メインに描かれたもので「原田マハ風解釈」だと思う。
この作品は小説なので、それはそれで良いと思うのだけど、もしかしたらピカソは有名過ぎる人なだけに「こんなのピカソじゃない」と思う人もいるかも知れない。
ピカソの絵は興味深いし面白いとは思うものの、人間として見ると芸術家によくある「人としてはどうかと思う」な人なので、その辺の事は気にしないで読んでいただきたいと思う。
どちらかと言うと、この作品の中でのピカソは比較的まともに描かれている印象を受けた。
現代編については、主人公があまりにもスーパーウーマン過ぎるかな…とは思うものの、よく出来た良い話だと思う。
ただ主人公がスーパーウーマンであるがゆえに、人間味が薄くてちょっと物足りない気もした。
……とは言うものの、なんだかんだ言って、原田マハの書く絵画をテーマにした作品って大好きだ。
また別の作品も読んでみたいと思う。