吉村萬壱の作品を読むのはこれで3冊目。
先の2冊で「あ。私、この人好きかも」と思ったのだけど、完全にやられた。かなり好きだわ。
今回の作品はエッセイだけど、これがまた気持ち悪くて最高だった。力のある小説家だからってエッセイも面白いとは限らないのだけど、吉村萬壱はどちらも面白い。
生きていくうえで、かけがえのないこと
- 吉村萬壱が『生きていくうえで、かけがえのないこと』について書いたエッセイ。
- 眠る 食べる 出す 休む 書くふれる 悲しむ 喜ぶ 嘆く 老いる 読む 見る 聞く ときめく 忘れる 働く 癒す 愛する 耐える 念ずる 待つ 憎む 見つめる 壊す 祈る
- 吉村萬壱が好きな人にはオススメしたいけど、そうじゃないと微妙かも。
感想
私は大好きだけど、この作品は好き嫌いが別れると思う。好みから外れたらムカつくだろうし、気持ち悪いと思う。
「なんだか色々こじらせた面倒臭いおじさんの書いたエッセイ」って印象を受けた。
書いている内容は理解できるし、共感するところもあると言えばあるのだけれど「なんて面倒臭い人なんだ!」と思ってしまった。だけど、その面倒臭い感じが愛おしいと言うか。
まぁ、要するに私の好みなのだと思う。
「実は双子の兄です」とか「27年間教師やってました」とか「食べる喜びが分かりません」とか、ご自身の事を沢山書かれているのだけれど、作品を読んだことのある人なら「なるほど! だから、あそこでああなるんだ」と納得出来るかと思う。
自分の中で作者と作品が繋がったと言うか、疑問に思っていた謎が解けたと言うか。
相当個性的な人だし、乱暴な言葉を使うなら「変わった人」だと思う。だけど小説家とか、芸術家ってそうでなくては面白くない。
この作品の中で特に興味深かったのは作者と動物との関わり方。
たぶん動物が好きな人だと思うのだけど、一般的な動物好きとはちょっと違っているのだ。小学生の頃に作者が体験した仔犬との話など人によっては許し難いことだと思う。
だけど、なんと言うのかな。動物愛護とかそう言う観点とはズレるけれど、作者の考える「動物観」は個人的には「なんか分かる」と思うところが多かった。
作者の書く小説は面白いのだけど、読むのがけっこうしんどいので次々読むとなるとかなりキツイ。
しかし、このエッセイを読んで「他の作品も読んでみたい」と強く思った。上手く感想が書けなくてもどかしいのだけど、とにかく他の何かとは似ていいない良いエッセイ集だと思った。