私が子どもの頃に読んでいた少女向けの小説を最近、娘が読むようになった。娘は体育会系女子だし「親の趣味を押し付けちゃ駄目だ」と思っていたので、娘には基本的に自分の好きな本は勧めずにいたのだけれど、私が勧めた0011ほらふき探偵団シリーズの『0011発進せよ』が気に入ったのがキッカケで「お母さんが子どもの頃に読んでいた本は面白い」と思ってくれたらしく、本棚に並べてある本を自分で勝手に出してきて読むようになった。
本好きとして、こんなに嬉しい事はない。
私が子どもの頃に読んでいた少女向けの小説を娘が読むようになった。娘は体育会系女子だし、親の趣味は押し付けちゃ駄目だと勧めなかったんだけど本棚にあるのを出してきて自発的に読んでいる。しかし、この3冊。3冊とも絶版らしい。 pic.twitter.com/EDWn0GeXz5
— 白蓮@ゆらら (@yurarra) 2016年10月20日
私が「これは手放したら一生後悔するから手元に置いておく」と心に決めて、小学生の頃からこんなオバサンになるまで持っていた本は大抵が絶版になっている。0011ほらふき探偵団シリーズに関しては面白いのは間違いないけれど、時代にそぐわない箇所が多いので仕方がないと思うものの「えっ? この作品がどうして絶版なの?」とビックリする作品も多い。例えばTwitterの写真にある『薫は少女』と言う作品。現在、中古価格2000円以上で取引されているらしい。児童文学でそれだけ高値がつくと言うことは「手元にないけれど、もう1度読みたい」と言う人間が多いからだと思う。今となっては「手放さなくて良かった」って話ではあるのだけれど、泣く泣く手放してしまった本の方が多い訳で、たぶんそれらの作品とはもう2度と出会えない気がする。
「素晴らしい作品は後世まで伝わる」なんて幻想だ。
幻想と言うより本を愛する人達の「希望」とか「願い」なのだと思う。どんなに素晴らしい作品でも時代の向こうに消えてしまう事がある。もちろん長く読み継がれている作品が素晴らしいって事に異論はないけれど「素晴らしい作品は後世まで伝わるから大丈夫」と安心してはいけないと思う。児童文学や絵本は特に。
絵本や児童文学がお好きな方に老婆心ながら申し上げたい。好きで好きでたまらない本は手放しちゃ駄目だ。ただし「手放しても良い本」ってのもある。例えば『若草物語』とか『ハリーポッター』とか定番中の定番になっている本。絵本だと『ぐりとぐら』とか『ミッフィー』のシリーズとか、せなけいこの鉄板作品なんかも大丈夫。保育園・幼稚園・小学校で定番とされている本はまずまず安心して良いと思うのだけど、10人に聞いてみて2人しか知らないような本は要注意。本当にその作品を愛しているなら、絵本だろうがラノベだろうが児童文学だろうが手元に置いていた方が良い。
「本気で読みたいなら国立国会図書館に行けばいいよ」と言う人もいると思うのだけど「子どもの読む本でそこまでする?」って話だ。大人の趣味としてはアリだと思うけれど、子どもが読む本は自分の家にあったり、図書館や学校の図書室で手軽に借りる事が出来てこそ価値があると思う。
……とは言うものの、日本の住宅事情だと気に入った本を全て置いておくなんて無理な話だ。「どの本を捨てて、どの本を手元に置くか」と言うところは本好き人間にとって悩ましいところだと思う。私もずっと「本を捨てて、空いたスペースに新しい本を買い、本棚が一杯になったらまた捨てて…」と言う事を何度となく繰り返してきている。つい最近も大量に本を処分した。
子どもの頃の夢は「大人になったら図書室のある家を作る。壁には天井まである作り付けの本棚を作って、ハシゴを使って上の棚の本を取るんだ…」なんて事を本気で思っていた。現実は「本は基本的に図書館で借りて読む。凄く気に入った精鋭だけ購入」と言うスタイル。本を手放す時には「手元に置かねばならぬ本はどれか?」と悩みな悩んで厳選。このスタイルが死ぬまで続いていくのだと思うと少し切ない。「本との出会いは一期一会」とキッパリと思い切れたら良いのだろうけど、私にはとても出来そうにない。