昨日、京都の細見美術館で開催されている春画展に行ってきた。
春画展は2013年秋から2014年初めにかけて大英博物館で開催され、昨年は東京の永青文庫で開催されて随分話題になっていた。
ネットで観に行った方の感想を読んでいると、なんだかとても楽しそうで以前から気になっていた。そして京都開催が決まった時に「これは行かねば!」と決意した。
実は私。実のところ日本画も浮世絵もあまり興味がない。
絵を見るのは大好きだけど、私が好きなのは油っこい感じの西洋絵画。日本画なんて今までまともに観たことがなくて、それこそ美術の教科書を眺めた程度。素養も何も無い状態で、下衆な好奇心から行ってみたいと思ったのだ。
それに娘が成長して「娘が学校に行っている間に遠出してもいいかな」と言う気持ちなった…ってのも大きな理由の1つ。昨日の春画展は前夜、眠れないくらい楽しみにしていた。
夫と娘を送り出し最低限の片付けをして京都へ向かった。
美術館に到着したのは開館直後。行列こそなかったけれど、中に入るとすでに結構な混雑っぷりだった。とは言うものの、その日の午前中は「少し並んだら観る」と言う程度で、伝え聞いている東京の混雑っぷりからすると、のんびりしていたのではないかと思う。
春画をちゃんと見たのは初めてだったけれど、すっごく面白かった!
エロである事には間違いないのだけど、隠微というよりも大らかでアッケラカンとした感じ。見ていて朗らかな気持ちになってしまった。
人気の絵師達が情熱と工夫を注ぎ込んだであろう絵を見ていると「人間って昔からあんまり変わってないんだなぁ」とか「描く人も収集する人もホント馬鹿(いい意味で)ばっかりだなぁ…」なんて事を思った。
ひと言で言うなら「人間っていいな!」ってこと。
「春画」と言うのは突き詰めると人間を描くことであって、時代や絵師によって個性があって「これ好き」と思う作品もあれば「これは無理」と思う作品もあった。
絵師の嗜好が反映されるので、絵によって見所が全然違うのだ。陰部だったり、手だったり、足だったり、肌の質感だったり、尻だったり。今更だけど「日本の絵も素晴らしいな」って事に気付かされたのは大きな収穫だった。
春画展に行くまで日本画とか浮世絵には興味が無かったのだけど、機会があれば見てみたいと言う気持ちになってしまった。
またヲタク的な視点でも面白かった。
春画と言っても「これを見てムラムラしてください」と言われても現代人には無理だと思うのだけど、当時の技術と想像力を駆使して描かれたであろう絵は、どこかグッっとくる物があった。そこのところは今のエロ本、エロマンガとも変わらない気がする。
例えばエロ漫画の中に「触手」と言うジャンルがあるけれど、江戸時代からすでに触手はあったと言う事実に驚愕した。
私が見たのはタコだったけど、なんと物語と言うかセリフが付いていて、タコが大真面目に女性を責めているのだ。
ちなみにタコは葛飾北斎の作。タコの台詞も葛飾北斎が書いていたとのこと。「ちょ! 北斎、何やってんだよ!」と言う気持ちで一杯になってしまった。気になる方は「葛飾北斎 タコ」で検索してみてください。
日本は何かにつけてマイノリティが認められない社会だと指摘される事があるけれど、春画の世界では男同士、女同士、獣、触手、人妻、役者、遊女、町人、聖職者、高貴な方から下賤の者まで何でもOK。その大らかな世界を見ていると楽しい気分になってしまった。
……ま。真面目っぽく書いてみたところで、しょせんエロなんだけど。
実際、春画展は18歳以上の年齢制限が設けられている。
性的な事を何でもかんでもオープンにすれば良いと思っている訳ではないけれど、紳士淑女のお楽しみとしてならアリだと思う。絵画展に行くのは数年ぶりだったけれど、楽しい時間を過ごさせてもらった。思い切って出掛けて良かったな……と思う。