『学歴狂の詩』は滋賀県に生まれ育ち、中学受験を経験して洛南高校(作品では某R校と表記されている)に進学。1浪して京都大学に進学した作者の経験をベースとした学歴エッセイ。
京都大学と言うと森見登美彦とか万城目学とか、やたら文学者が多い印象。読書界隈では「京大文学」というジャンルが存在するほどだ。『学歴狂の詩』は京大文学……とまではいかないかも知れないけれど「賢い人の書く文章って面白いなぁ~」と思える類のエッセイだった。
学歴狂の詩
- 京大卒の佐川恭一が、自身の受験体験と学歴に強く執着する人々との出会いをもとに綴ったノンフィクション。
- 全16章で構成され、〈天才〉濱慎平、〈東大文一原理主義者〉内山、〈伝説の英語教師〉宮坂、〈努力界の巨匠〉菅井など、個性豊かな人物が1章ごとに紹介される。
- 受験生や教師、同級生、大学卒業後に出会った人々まで、多様な「学歴狂」の姿を通して、受験文化や学歴観をさまざまな角度から描く。
- 学歴への強いこだわりを持つ人々の言動や生き方を積み重ねながら、「なぜ人は学歴に囚われるのか」という問いを明らかにしていく。
感想
1章ごとに個性的な登場人物が紹介されるのだけど、どの章に登場する人達も魅力的で面白かった。きっと作者が彼らを愛している(尊敬している)からだと思う。変人揃いなのだけど決して馬鹿にしている風ではないのが好ましかった。
私自身は彼らのように頭の良い人間ではないので共感することはできなかったのだけど、娘が進学校に通っていたのと、中学時代は名の知れた塾に在籍していたのとで「なるほどなぁ」と答え合わせをするような気持ちで読んでいた。
特に気に入ったのは「伝説の英語教師、宮坂」のエピソード。洛南高校の英語の先生なのだけど、今の感覚からするとなかなかクレイジー。めちゃくちゃ怖いし暴言も吐くのに生徒達からは慕われていたとのこと。宮坂のエピソードを読みながら娘が中学時代に通っていた塾の数学の先生のことを思い出していた。めちゃくちゃ怖くて厳しい先生だったのに彼を嫌いな生徒は1人もいなくて、めちゃくちゃ慕われていた。名門校とか名門塾(予備校)には伝説の教師的な人が本当にいるのだな……と妙に感心してしまった。
最初から最後まで読んで感じたのは、学歴狂云々と言うよりも、登場人物達には共通点があるということだった。「地頭が良い」ってことは大前提としてあるのだろうけど、誰もがみな妥協しないのだ。努力で突っ走る人もいれば、何だか謎な方向に走ってしまったりする人もいたけれど、それはそれとして全力投球している人がほとんどだった。
唯一の例外として「足るを知る男、本田」がいるのだけど、本田にしたって「自分は自分の手の届く範囲で無理のない努力のみで生きていく」と決めて進んでいる気がする。ちなみに本田は神戸大学に現役合格しているので、洛南高校からすると人権がないレベルかも知れないけれど一般的には凄いことだ。
ちなみに。『学歴狂の詩』という題名なので「学歴」だけに絞ったエッセイと思ってしまいがちだけど「私立男子校あるある」みたいな要素も含まれているのだ。男子校出身の人は楽しく読める気がする。ちなみに作者の出身校である洛南中学・洛南高校は現在は共学化していて男子校ではない。
進学校を経て一流大学に進んだ高学歴の人が楽しめるのはもちろんだけど、低学歴の人も「なるほど。こんな世界もあるのか」と楽しめる作品なので、難しい本に疲れた時などに読むにはちょうど良いエッセイだと思う。


