8歳になる娘は、つい先日まで親から叩かれた事が無かった。
私は決して昨今流行の「叱らない育児」の信者ではない。ガツンと怒る時は怒るし、どちらかと言うと厳しい方だと思う。
しかし行儀の悪い時や食事のマナーが悪い時は、手を「パチン」くらいはするものの、今まで1度も体罰を加えた事がなかった。
単純に暴力的な事が嫌いだ……と言うのが大きな理由。確固たる信念がある訳ではない。
……とは言うものの、子どもは叱られて育つものなので、娘を叱らない日なんて皆無と言っていい。
大抵は口で叱る。
そして、やらかした事の度合いによっては何某かの罰を与えている。先日は罰として「反省文」を課題とした。「今回の事柄について作文を書きなさい」と言うもので、作文の苦手な娘にとって、けっこうストレスの大きな課題だ。
しかし娘は「作文、面倒だなぁ」とグズグズ。「面倒なのは当たり前。そうでなければ罰にならないからね。そりゃあ、子どもを叩いたりするお家もあるだろうけれど、お母さんそんなの嫌いだから」と私。
しかし娘は「叩かれるなら一瞬で済むからいいじゃない」と解釈したらしい。
娘が言うには、クラスの男子が悪いことをして親から「おしりペンペン」された事を作文に書いたらしい。
「私は1度も叩かれた事ないし、叩かれてみたい」と娘。経験した事がないって、こんなに無邪気なものなのかと驚愕しつつ「じゃあ、罰として、おしりペンペンしましょう」と言うことになり、歳の数だけ娘のお尻を叩いた。
叩かれた事のない娘はさぞ大ショックだろう……と思ったのだけど、私の叩き方が優しかったのか、娘が我慢強かったのか、意外と娘は平気だった。
「これだったら叩かれた方がいいかも」などと言い放つので「これはマズい」と思った私は、鬼の形相を作って娘の頬を平手で叩いた。
そして娘はようやく泣いた。そして私は娘に言い聞かせた。
「あのね。大人が人を叩くって、こう言う事。ダウンタウンの『笑ってはいけない』でお尻をタイキックされるのとは違うよ。お母さんがお父さんのお腹をパチンしたり、行儀の悪いYの手をパチンするのとも違う。今回はそこまで酷くしなかったけれど、もっと酷くなったら虐待だし、虐待で死んでしまう子がいるのは知ってるよね? 動物は叩かないと分からない事があるけど、Yは人間でしょ? 人間は口で言ったら分かるはずです。でも、どうしてもYが叩いて躾をして欲しいと言うなら、考え方を変えることにする」
娘は「もう叩かないで欲しい」と言った。流石にショックが大きかったらしい。
娘もショックだっただろうけれど、親の私もショックだった。
子育てって本当に難しい。まさか娘が「試しに叩いて欲しい」なんて発想をするとは思ってもみなかった。
私はこれからも「叩いて躾をしよう」とは思わないだろうけれど、1度経験させた事については後悔していない。
これから、娘もどんどん手強くなってくるだろうし、私ももっとしっかりしなくては……と強く思った。