『無痛』は医師であり小説家でもある久坂部羊が描いた医療サスペンス小説。私は一時期、久坂部羊に激ハマりしていたのだけど、何故だか今まで読んでいなかったのだけど、Audible化されたのを機会に聞いてみることに。
先にお断りしておくけれど、今(2025年)から読むのであれば「19年前に書かれた作品である」と言うことで、医学的な知識や知的障害者、及び精神疾患、自閉症などの認識が今とは全く違っていて「当時書かれた作品である」ってことを理解した上で読む必要がある。
無痛
- 人を見ただけですぐに症状がわかる二人の天才医師と無痛症の男…
- 精神障害児童施設に収容されている14歳の少女が神戸での一家惨殺事件の犯人は自分だと告白するのだが……
- 刑法39条や痛みの意義など、医師の視点を盛り込みつつ描く医療サスペンス
感想
久坂部羊って昔から医療と治療に関する方向性が固定されていたんだなぁ~ってことを確信した。私自身、久坂部羊側の考えの人間なので好きだけどね。
それはそれとして。『無痛』は途中まで面白かったのだけど、途中から苦笑いして読む部分が多くて手放しでは評価出来ない。
エログロ描写がやたら多くて「あら、先生。お好きなのね?」みたいな気持ちになってしまった。1990年代から2000年ちょい過ぎあたりでに発売されたPC版のエロゲーを文字で読まされているようだった。エルフが出していた『臭作』とか『野々村病院の人々』あたり。どうして知っているかというと私はどうしようもないヲタクなので、男性向けエロゲーもけっこうプレイした経験があるのだ。
もしかしたら久坂部先生、エルフのゲームを参考にされたのだろうか? 「当時はこういうタイプのエロゲー流行ってたよねぇ」と当時に思いを馳せてしまった。
それはそれとして。作品自体は面白かった。そして最初に書いているけれど知的障害者、及び精神疾患、自閉症などの描写が2025年の現代からすると「ありえねぇ…っ」て感じではあるけれど「20年やそこらで、ここまで解明されているのだなぁ」と思うと胸熱ではある。
私。久坂部羊については「ファンです」くらいの勢いで大好きだけど『無痛』についてはエロ描写もさることながら、オッサン浪漫が鼻について苦笑いしてしまう部分が多過ぎた。
前半は物語の勢いと面白さの方が勝っていたので気にならなかったのだけど、半分読んだあたりからは「あら…まぁ…久坂部先生ったら」みたいな気持ちで読んでいた。個人的には久坂部羊作品だと『廃用身』がマイ・ベストなのだけど『廃用身』を今の私が読んだら、どんな感想になるのだろう? これを機に再読してみようと思う。