『カフネ』は2025年本屋大賞受賞作。作者の阿部暁子の作品を読むのは初めて…と言うか、全くもってノーチェックだったので急ぎ読んでみた。
「号泣必至」みたいな触れ込みで「感動した」「泣いた」などの評判だったのだけど残念ながら私は1ミリも共感出来なかったし、始終違和感しかなかった。
本屋大賞受賞作をディスりにいくのは大変心苦しいし、たぶん…だけどファンも多いだろうから申し訳ないのだけど、今回は猛烈に否定的な感想しか書けない。なので阿部暁子の好きな方や『カフネ』を読んで涙した方はこの先を遠慮して戴いたい。
さらに言うなら盛大にネタバレを含む感想になるので、そこのところも合わせて「それでも良いよ」って方だけ読んでください。
カフネ
- 法務局に勤める野宮薫子(41歳)は溺愛していた12歳年下の弟・春彦を亡くして失意の底にいた。
- 薫子は春彦の遺言書に従い、彼の元恋人である小野寺せつな(29歳)に晴彦の遺産を受け取って貰うよう、せつなと会うのだか疲労から倒れてしまう。
- 倒れた薫子を彼女の自宅まで送ったせつなは薫子に温かい手料理を作り、薫子は久しぶりに心と体が癒されるのを感じる。
- せつなは家事代行サービス会社「カフネ」で働く料理人で、春彦は生前カフネが本業とは別に行っていた家事ボランティアその活動に関わっていたことを知り、せつなの誘いで家事ボランティアに参加するようになる。
- 薫子とせつなはコンビを組んでさまざまな家庭を訪れ、料理と掃除を通じて人々の暮らしを支える中で、次第に心を通わせていくのだが、春彦の死の真相やせつなの抱える秘密が明らかになるにつれ、二人の関係は新たな試練に直面する。
感想
私は作者の感性とはトコトン合わない人間なのだと思う。人物表現が気持ち悪くたまらなかった。特に嫌だったのがヒロインの薫子がすぐに性的な感覚になること。
例えば…美味しい物を食べた時や綺麗な女性を見た時、すぐに下腹部や子宮の感覚に変化を覚えるのだけど、多くの女性ってそう言うものなんだろうか? 発情期の動物みたいだ。昔、何かの本で「人間だけが年がら年中発情してる。動物は決まった期間しか発情しない」って話を読んだ事があるけどホントそれ。私は作者の表現を「気持ち悪い」って思ってしまったけれど、多くの人が気持ち悪いと感じないのなら私の感覚の方がオカシイのだと思う。
物語の展開的にも下手くそだと思う。死んだ弟が「実は同性愛者でした」ってオチは合鍵の時点で分かってしまうし、弟の相手のクソ野郎ぶりにもゲンナリした。
さらに言うなら薫子がせつなにパートナーシップ(または養子縁組)を申込むラストには「ホント止めてくれ」って気持ちになってしまった。
誤解の無いように書いておくけれど私は性の多様性を認めていこう…って今の風潮を嫌ってる訳じゃないし同性愛を嫌悪している訳じゃない。『カフネ』で描かれた世界はコレジャナイと思うし「どこかズレてませんか?」と言いたいのだ。
カフネが行っていた家事支援のボランティア活動自体は素晴らしいと思うものの、それについても思うところが多過ぎた。
家事サポートってお高いですよね。基本的にはセレブの領域。育児サポートとなればさらにお高い。知たり顔で「助けが必要な時は誰かを頼って云々…」と語られても「そうじゃねぇんだよ」みたいな気持ちになってしまった。
『カフネ』の中で私もが唯一共感出来たのは「人は美味しい物を食べて落ち着いた部屋で寝ないと心身駄目になるよ」って主張だけだった。
この作品。本屋大賞受賞してるけど世の中の人は『カフネ』を読んで良かったと思ったんだろうか?私にはとても理解出来ない。小説はあくまでも作り事でしかないけれど最低限のレベルで現実世界とリンクすることは必要だと思う。
日本人はもう少し大きな視点を持って自分達が暮らす社会について考えた方が良いのかも知れない…そんな事を思った。