『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』は書店で題名を見た時からずっと気になっていたのだけれど、あまりにも直球過ぎる題名に気後れしてしまって、今までずっと敬遠していた。
それなのに「読んでみよう」って気持ちになったのは特に理由がある訳じゃなくて、なんとなく魔が差した…みたいな感じだった。
そして読んでみた結果…案外良かったんだなぁ~これが。若い女性じゃないと共感出来ない内容かと思っていたけど52歳でも大丈夫でホッとした。
試着室で思い出したら、本気の恋だと思う
- 路地裏にあるセレクトショップの試着室というプライベートな空間で鏡に映る自分と向き合いながら、過去の恋の終わりやその時に感じた気持ちを振り返る短編集
- 年下に片思いする文系女子、不倫に悩む美容マニア、元彼の披露宴スピーチを頼まれる化粧品会社勤務のOL…など
- ルミネの広告コピーから生まれた恋愛小説
感想
『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』がルミネの広告コピーから生まれた恋愛小説だ…ってことを知ったのは本を読み終えてからのこと。知った時は「なるほど!」と合点がいった。「綺麗になりたい」「可愛くなりたい」という女心が見事に描かれていて、上手いこと恋愛に絡ませていた。
それぞれ主人公が異なる短編集なので、主人公達全員に心を寄せることは難しいかも知れないけれど社会人として働いたことのある女性なら「ああ…なんか分かる」って主人公はいるんじゃないかと思う。
正直言ってイライラしちゃうような性格の女性もいるし「その言い分はどうなんだい?」と思ってしまうような女性もいたけど、恋をして「綺麗になりたい」と思う気持ちは共通で「分かるよ…分かる」と思ってしまった。
私は女性が綺麗になりたいと思うのは「恋人に褒めて欲しいから」ってだけではないと思っている。個人的には「何か1つのことに夢中になっている時の女性」って、お洒落に気を使いがちだし、どんどん綺麗になっていくな~と思っていて、たまたま彼女達はそのベクトルが恋愛だったのだろうな~と。
例えば…の話だけど。私はすでに52歳の既婚者なので恋愛からは遠ざかっているけれど「観劇の時はお洒落して行きたいよね」とか「いい感じの美術館に行くんだから自分もお洒落したい」みたいな気持ちは残っている。
「綺麗なりたい」「可愛くなりたい」って思ってる女性って健気で可愛いなぁ~と思ってしまった。もしかしたら共感と言うよりは、若い女性を見て「なんて可愛いのかしら」と微笑むおばあちゃんの気持ちに近いのかも知れない。
ちょっと上手く説明仕切れないのがもどかしいけれど、なんか予想以上に良かった。本って題名とか評判だけ聞いて毛嫌いせずに、とりあえず読んでみるものだなぁ~と思った1冊だった。