『日日是好日』は森下典子の 『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ-』が原作の日本映画。樹木希林が主演と言うことで公開当時、話題になっていたのを覚えている。私もずっと観たいと思っていたけど、なんとなく今まで観ないまま、ここまできてしまった。
ちなみに私は茶道は中学生の頃に習っていたけれど、それこそ「齧った程度」で何も身に付いていない。茶道の先生が健康上の理由で教室を畳んだのを機に辞めて、それ以降新しい先生に…とはならずにお稽古を終えてしまった。だけど茶道の先生は好きだったし、茶道自体はなんとなく好きだったので懐かしく思い出しながらAmazonプライムで視聴した。
日日是好日
日日是好日 | |
---|---|
監督 | 大森立嗣 |
脚本 | 大森立嗣 |
原作 | 森下典子 『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ-』 |
出演者 | 黒木華 樹木希林 多部未華子 原田麻由 川村紗也 滝沢恵 山下美月 (乃木坂46) 郡山冬果 岡本智礼 荒巻全紀 南一恵 鶴田真由 鶴見辰吾 |
音楽 | 世武裕子 |
公開 | 2018年10月13日 |
あらすじ
大学生の典子は、突然母親から茶道を勧められる。戸惑いながらも従姉の美智子(とともに、タダモノではないという噂の茶道の先生・武田のおばさん(樹木希林)の指導を受けることになる。
典子は大学を卒業しても就職もせずに出版社のアルバイト(フリーライター)として30代に突入。一緒に茶道をはじめた美智子は大学を卒業してすぐに就職をし、お見合いをするために退職し婚約をして子どもに恵まれる。
茶道を続けながら典子は自丼とは違う道を進んでいく美智子との間に遠い距離を感じていた。
典子は10年間辞めずに続けてきた茶道で様々な茶道仲間との出会いを通して大切なことをたくさん学んでいく。
典子ははある時、一念発起して出版社の就職面接に挑むが残念な結果となる。そして、ずっと付き合っていた彼氏の裏切りにより結婚直前で破談となる。彼氏と別れて落ち込んでいた典子はしばらく茶道からも距離を置くのだが、ふたたび茶道に戻ってくるのだった。
茶道あるある的な
『日日是好日』は茶道をテーマにした映画だけど、実際に少しでも茶道に触れたことのある人なら「分かるぅ」とか「あるあるだよね」みたいなことが丁寧に描写されいたのが良かった。
私自身、ちょっとだけとは言え習ってみて思ったのだけど茶道は「四の五の言わずに手順と型を覚える」ってことが求められるので記憶力に長けていて器用な人なら爆速で上手になっていく。なので若い人の方が覚えが早いので茶道をはじめるなら若い方が圧倒手に有利。そんな描写は無かったけれど師匠の武田先生は典子達が弟子になると知った時「よっしゃぁぁ」「キターーー!」みたいな感じだったと思う。
じゃあ茶道は「若い人がはじめれば無双できるのか?」って言うと、そんなことがないところが面白い。ある程度型が身に付いたらそこから先はセンスの有無もあるし、そもそも「精進できるかどうか?」ってところで差がついてくる。
典子は茶道を長く習っている中で茶道的なところに伸び悩みを感じた時に師匠から「そろそろ自分で工夫する必要がある」と言われるのだけど、茶道を習ったことのある人なら「そりゃ、あの子じゃ無理だよね」と感じたと思う。たぶん…だけど典子は惰性として茶道を続けいて、本気で打ち込んではいなかったりのだと思うのだ。
茶道に限ったことじゃなくて習い事の類って習い始めの時はワクワクと好奇心から夢中になってしまうものなのに彼女にはそれが無かったし、それ以降も自主的に茶道に打ち込んでいる姿は描写されていない。
「じゃあ典子は茶道人として駄目っ子だったのか?」と言うと、それもまた違う気がする。結局、典子は茶道を辞めていないのだもの。辞めずに続けることで到達できる世界がある…ってところまで作品の中で描いていたところがとても良かった。
樹木希林の存在感
『日日是好日』は結果的に樹木希林の遺作となっている。樹木希林の演技「これぞ茶道の先生」って感じがして、とても良かった。不思議と私が習っていた茶道の先生に似ていたのだ。顔は全然違うんだけど雰囲気と言うか空気感が。
茶道の楽しさって「手順を覚える」とか「お茶美味しい」とか「侘び寂びを感じる」とか色々あると思うのだけど「先生の話を聞くのが楽しい」ってとろこも含まれる気がする。
茶道の先生って、ところどころで茶道のうんちく的なところとか茶道から少し外れた教養的な話をしてくれるのだけど、樹木希林が弟子に語りかける感じは本当に「これぞ茶道の先生」って気がした。
あと茶道ってのは理屈じゃ語れないところがあって弟子から突っ込まれた時に「そういうものなのよ」と恥ずかしそうに誤魔化しちゃうあたり、可愛らしくてとても良かった。樹木希林って美人女優じゃないのに、なんか可愛いと言うかチャーミングに見えてしまうのが不思議だ。
茶道に徹し切れていない感
『日日是好日』そこそこ楽しめたのだけど「最高です!」ってほどでも無かったな…って気持ちがあるのも本当のところだ。
ヒロイン典子の成長を描いた作品のなか、それとも茶道の魅力にフォーカスした作品なのかがブレている気がした。
茶道にフォーカスした作品と言うにしては茶道の魅力を伝え切れていないし、そもそも典子が茶道にハマっていないのも気になる。「茶道に夢中になる」と言うよりも「茶道を辞めずにダラッと続けいたらここまで来ました」みたいな習い方なのが残念。「辞めずに続ける」ってだけで尊いことではあるものの、それでも映画としては物足りない、
典子と言う女性の成長物語…として観るにも魅力的とは言えないのが残念。普通の人の普通の反省。波乱万丈だったり、本人が努力して変わっていくタイプの物語でもないのだ。
休日の午後に気楽に楽しむ作品…としてはうってつけの1本だと思うものの「最高ですか?」と聞かれた時に「最高です!」と即答できるほど力のある作品ではなかった。