『婚活マエストロ』は『成瀬は天下を取りにいく』で本屋大賞を受賞した宮島未奈の最新作。成瀬シリーズは私も気に入っているので、宮島未奈が新しい作品を出したら絶対に読む」と張り切って読んでみた。
……結果。イマイチだった。申し訳ないけど期待外れ。世間的には好評みたいなので、好みの問題かも知れない。
今回はディスり気味&ネタバレ込の感想なので、宮島未奈のファンだったりネタバレNGの方はご遠慮ください。
婚活マエストロ
- 40歳のWEBライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受けたことをキッカケに婚活業界と関わっていく。
- ドリーム・ハピネス・プランニングには婚活マエストロと呼ばれる鏡原の指揮する婚活パーティーで猪名川健人は鏡原と共に婚活パーティーを通じて、自分自身も婚活を意識するようになるのだが…
感想
宮島未奈の文章は軽くてノリが良くて大変読みやすい。その読みやすさは健在で『婚活マエストロ』もサクサクイッキ読み出来るタイプの作品だった。イッキ読みはしたものの個人的には「毒にも薬にもならないタイプの作品」と言う印象。良きにつけ悪しきにつけ尖ったところが1つも無い。
まず最初に題名が良くない。『婚活マエストロ』だなんて大仰な題名を付けているのに、肝心の婚活マエストロは普通の女性だった。いきなりネタバレで恐縮だけど「匂いでカップルになりそうな人が分かる」と言う設定だったけど、そんな人は普通にいる。「匂いで」ではないけれど、妙に勘が良くて察しの良い人って、職場や学校に1人はいたよなぁ~って話。
登場人物は漫画ちっくで全員善人。登場人物が善人なのは『成瀬は天下を取りにいく』でも同じだったけれど、これは作者のポリシーなのかも。
個人的にムカついたのはヲタクっぽい30代婚活女性の喋り方があまりにも酷かったこと。そう言えば成瀬の話し方も独特ではあったものの、京大現役合格するような超天才の場合「それもアリか」と納得していた(実際、私の幼馴染にも不思議な喋り方をする子がいて、彼女はめちゃくちゃ頭が良かった)
「そうであらせられましたか」なんて口調、いくらなんでも「そんなヤツおらんやろ?」と突っ込まざるを得ない。現役のヲタク女性として言わせてもらう。「ヲタク馬鹿にすんな!」ヲタク女性ならネガティブな枠に当てはめてディスっても良いと勘違いしてないか?
あとさ…主人公の設定も無理があり過ぎて草生える。10年ほど前はwebで稼いでいた私が言わせてもらうけど、今はコタツ記事のWebライターなんて儲からない。10年前ならそういう話もあったけど最近のライターは一文字1円を切る単価が当たり前だったりする。現役でもしっかり稼げている人もいるけれど猪名川健人のような姿勢で生き残っていける業界ではない。
主人公の設定にしても薄っぺらい人物描写にしてもリアルが感じられず、コタツ記事ならぬコタツ小説だな…と思ってしまった。
誰にでも読みやすい文章は評価するものの、それ以外は何ひとつ良いと思えない作品だった。とは言うものの「宮島未奈はもう読まない」とまでは思わないので、次回作に期待する。