『民王』に続けて、政治家をテーマにして小説をもう1冊読んでみた。今回は昨年、熱く追いかけていた早見和真の作品。
早見和真は追いかけてしまうくらいには好きになりつつある作家さんだけど、正直『笑うマトリョーシカ』は私にはイマイチだった。テレビドラマ化もされた作品とのことだけど、技工に走っているわりには青年漫画みたいな展開だった。
昨今の流行りに疎いので初老女性には難しかった気がする。人気作品…なのかも知れないけど、ディスり気味な感想になることを先に謝っておきます。本質的なネタバレはしませんが、軽く本編の大事な部分に触れます。
笑うマトリョーシカ
- 「若き総理候補が誰かの操り人形だったら?」有望な若き代議士の周りには彼を操ろうとしている人たちが。ニセモノが総理になっていいのか?
- 若き総理候補への疑問を抱いた若い女性記者が総理候補の真実に迫る
感想
『笑うマトリョーシカ』の作者、早見和真の強みは「圧倒的な勢いで最後まで押し切る力」だと思っている。
今まで話題になった作品にしても話題になりそうなテーマを選んでいるものの、どの作品も深みはない。ただし熱量が半端ないので「圧倒的な勢いで最後まで押し切る力」で「まあまあ面白い」とか「勢いでイッキ読みしました」くらいには面白かった。
だけど『笑うマトリョーシカ』お前は駄目だ。
ミステリ風を装っているものの、比較的早い時期でオチが分かってしまったのが最悪だった。ミステリ苦手な人(私を含む)ではなくても、それなりに本を読んでいる人なら雰囲気だけでオチが分かっちゃうと思う。
政界の黒幕とか「操る人と操られる人の関係」に着目したのは悪くないと思う。だけど大前提としてオチが読めてしまうのが駄目過ぎた。せめて「エモい…エモ過ぎる関係だった…」と没頭させてくれたらアリだと思った。
思うに…早見和真は「まあまあ器用な小説書くけどエモさに欠けるよね」ってところだと思う。物語力は高いのだけど、人間関係のエモさを描く力が圧倒的に足りていない。どこかにエモさがあって、誰かの心に刺さればもっと素晴らしい作品になると思う。
エモさ求めるか…それとも物語力を磨くか…それが問題。、
「早見和真は池井戸潤に似てるかも?」と思っていた時期があったけれども、池井戸潤の場合、エモさは無いけど物語力は早見和真より上なんだよなぁ(遠い目)
まあまあに読み込んだ早見和真だけど「もう、いいかな?」と思ってしまった。ただし爆発的に話題になれば、こりもせず読んでしまうかも知れない。