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汚れた手をそこで拭かない 芦沢央 文春文庫

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『汚れた手をそこで拭かない』は第164回直木賞候補作。前知識ゼロの状態で図書館で題名借りしてしまった。

「汚れた手をそこで拭く」と言うフレーズを聞いて一人勝手に「なるほど…子育てがテーマの小説なんですね。分かります」と思い込んでしまったのだ。実際は子育て小説でもなんでもなくてミステリ系の短編集だった。

読んだ後で知ったのだけど直木賞候補作とのこと。

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汚れた手をそこで拭かない

ザックリとこんな内容
  • 日常に潜む悪意がテーマの短編集
  • 『ただ、運が悪かっただけ』『埋め合わせ』『忘却』『お蔵入り』『ミモザ』の5作収録。
  • 平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家などが、ささいなキッカケから転落していく…

感想

ジャンル的には「イヤミス」の部類に入るのかな? 「なんかちょっと嫌な感じのミステリ」ではあるけれど、真梨幸子とか湊かなえの描くイヤミスに較べると「なんかちょっと嫌な感じ」くらいで、精神的ダメージがくるほどガツンとはこなかった。だけど「上手いな」とは思った。

ネタバレしてしまうと身も蓋もないタイプの作品なので詳しくは書けないけれど、例えば、『埋め合わせ』は小学校の教師がプール管理をミスってしまった話。実際に小学校教師のミスで使われた水道料金を教師が負担することになった…と言う事件があったけれど、たぶんその事件から発想を得た作品なのだと思う。

人の心の動きの描き方がいちいち上手で感心した。

だけど短編小説の場合、インパクトやネタの強さで引っ張る必要がある。そういう意味てせはありきたりな話ばかりで残念だった。いっそネタで引っ張るならショートショートくらい短ければ良かったのかも知れないけれど。

ざっくり言うなら「帯に短したすきに長し」って感じ。

ショートショートにしてはインパクト的に弱い。ネタや描写は悪くないけど、重厚さには欠けるので長編のイヤミスには負ける。そこそこ面白かったのだけど、どっち付かずのの印象。

ただ個人的には好みの路線だったので、芦沢央の他の作品(もしくは次回作)は読んでみたいと思った。

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