小池昌代の作品にはすっかり惚れ込んでいるのだけれど、今回は正直イマイチだった。
前回読んだ『弦と響』(忙しい時期だったのか読書録には書いていない)が良かったので、期待ばかりが膨らみ過ぎていたのだろうか。
『黒蜜』は小池昌代が得意とする短編集。『ルーガ』とか『裁縫師』の感じと似ているように思う。
黒蜜
瑞々しくも恐ろしい子どもの世界。
「倦怠を知ったのは、八歳のときだ」感情のみなもとに視点を注いだ14編。
アマゾンより引用
感想
作品の雰囲気は嫌いじゃない。ちょっと不思議な感じに、軽く淫猥な空気が入ってくると言うか。
なんて説明したら良いのかなぁ……。今までの作風からかけ離れている訳ではない。むしろ、いかにも小池昌代って感じの筆なのだ。
それなのに、どこかキレが無い。読後に陶酔する感じとか、読んでいる最中にトリップする感じが無い。
他の作品とどこがどう違うのか……たぶん、綺麗過ぎるのだと思う。腐敗臭がしないのだ。そこが、ちょっと残念。
面白いのだけど、今回の短編集に収録されている作品は、どれもこれも一線を越えてないもどかしさがある。
それもまた味なのかも知れないけれど、私には随分と物足りなく感じられた。特に表題作の『黒蜜』。
地味だ……。小池昌代って、もっと意地の悪い人ではなかっただろうか。まぁ、でもこれはこれでアリなのかも知れない……とは思う。
先入観無しで読めば、それなりに面白いのだ。
なのに「もっと面白いよね。この人の書く作品は」という期待が大きかっただけに、ガッカリしてしまったのだ。
残念ながら私には物足りなかった。次の作品に期待したい。