最近、染井為人が好きだ。私の中で染井為人はミステリ作家…と言うよりも「時事問題を絡めた殺人話を上手いこと書く作家」と言う位置づけ。
『ひきこもり家族』はひきこもりを支援する施設で起こる事件を描いた作品。2025年の政府の発表によると、日本におけるひきこもりの人数は約146万人。数字にならない人を含めると、その数はもっと多いだろうとされている。
私の仕事(障害児支援)でも発達障がいが原因で不登校、不登校からのひきこもり…と言うケースは多々あるので他人事とは思えず手に取った。
ひきこもり家族
- 不登校をきっかけに引きこもりとなった19歳の僚太と20年以上家に閉じこもる叔父の大知。家族は二人を社会復帰させようとリヴァイブ自立支援センターに相談を持ちかける。
- 支援団体の職員によって二人は半ば強引に家から連れ出され、同じ境遇の若者たちと共に熊本の更生施設へ送られ、厳しい規律の共同生活を始める。
- 施設では外部との連絡を断たれ、暴力的な指導と監視の下で過酷な生活が続く。逃げ場のない環境の中で、入所者たちの不満と恐怖は次第に膨らんでいく。
- そんな中、追い詰められた入所者たちが施設長を殺害する事件が発生。引きこもりだった若者たちは思いもよらぬ現実に直面することになる。
感想
めちゃくちゃ面白かった。実のところ全面的に良い……とは言い難い作品でツッコミどころもあるにはあるけど、ツッコミどころを減点したとしてもそれを上回るくらいには面白かった。
5人のひきこもりが事件をキッカケに一致団結して困難に立ち向かっていく物語なのだけど『ぼくらの七日間戦争』に似た楽しさがあった。
『ひきこもり家族』を読んでいると「ひきこもりのコミュ障がそんな急に頑張れるものなのか?」って疑問が出てくる訳だけど、実際に災害を機にひきこもりから脱却するケースは多々あるらしい。急激な環境の変化や「やらなきゃ死ぬ」みたいな場面に突入すると、人間はやれる生き物みたい(もちろん全ての人に当てはまる訳ではない)。
世代も性別も違うひきこもり達が一致団結して頑張る姿には心打たれるものがあったし、ダブル主人公の僚太と大和は人間として「いいヤツ」だったので素直に応援することができた。
ツッコミどころとしては「殺人」という重すぎる罪をどう解釈するか?ということ。事情があったにしても人を殺して、ましてや土に埋めたとなると普通じゃない。そこのところの扱いはアッサリし過ぎていたように思う。もう少し深く突っ込んでも良かったかも知れない。
復興ビジネスをテーマにした『海神』や生活保護がテーマの『悪い夏』を読んだ時にも感じたけれど、染井為人は弱者を喰い物にする輩を書くのが好きなのかな? そう言えば初めて読んだ『鎮魂』は半グレ集団が大きなテーマになっている。
弱者を喰い物にする仕事や組織は闇が深い。そして場合によっては反社会的勢力の人達も絡んでくるので熱い題材ではある。染井為人が「面白さ」を求めてこのテーマを書いているのか、それとも義憤のような感情から書いているのかは分からないけれど、私も好きなテーマではある。
染井為人が今後もこの路線で書いてくれるなら、追いかけずにはいられないだろうなぁ。次の作品も期待したい。


