山崎ナオコーラの作品を読むのはこれで3冊目。
『人のセックスを笑うな』が印象的だったのだけど、次に読んだ『カツラ美容室別室』はイマイチ入っていけなかった。
それなのに、どうして手にとってしまったのかと言うと、またしても図書館での表紙借りである。青一色に黒字で書かれたタイトルがお洒落に思えてしまったのだ。
夏場に見る青は空や海を連想させて「おっ。いいな」と思わせるものがある。
可愛い世の中
芳香剤のメーカーで働く地味な会社員、豆子は、自身の結婚式を機に、金銭感覚が人生と共に変化していくことの面白さを発見する。
決して「モテ」を追求することなく、社会人としての魅力をアップしていきたい。退職して、「香りのビジネス」を友人と起こそうと画策する。
香水に、セクシーではなく、経済力という魅力を! 仕事と経済、カップルでいること……
アマゾンより引用
感想
「自分はブスだ」と思っているアラサー女性「豆子」が主人公。
豆子は四人姉妹の三人目。姉妹はそれぞれ個性的な要望と個性的な考え方の持ち主。
『若草物語』以降、文学の世界において四人姉妹はちょっと特別な気がする。もっとも現実世界では四人姉妹なんて滅多にお目にかかれないけど。
残念ながら主人公、豆子に全く思い入れる事が出来なかった。
豆子は相当面倒くさいタイプの女性なのだ。言っている事、考えている事には「一理あるな」と思うところもあるのだけれど、ちっとも可愛くないし憎たらしい。
「女性は可愛くあるべきだ」と言う意味で言っているのではない、人間として可愛くないのだ。
豆子の結婚相手はお金が無くて、豆子は自分の力で結婚式をしようとする。
「女性がお金を出す」とか「女性が男性の立場で事をすすめる」と言う発想は構わない。しかし他者の評価を気にしすぎるくせに社会的常識に欠けているところはいただけない。
さらに言うなら「一般的な価値観とは違う事をしたい」と思っていて、それに向かって行動しているにも係わらず「他人から褒めて欲しい」という承認欲求がやたら強いのだ。
「自分の価値観でやりたいように生きる。世の中は自分を褒めるべき」と言うのはなんだかなぁ……と思うのだ。他人の好意は頑なに受け入れないし、やることなす事は斜め上。
「そりゃ、ブス以前に煙たがられても仕方ないわ」と思ってしまった。
私が豆子を嫌うのは、たぶん私にも豆子ほどではなくても、豆子的な部分があるからだと思う。同族嫌悪ってヤツだ。
豆子はもっと素直にならなきゃ、自分も周囲も不幸にすると思う。
物語の最後で豆子は「人の目を気にしすぎる自分」に気づくのだけど、落としどころがイマイチすっきりしない。
あの性格のままで生きていくとするなら、十中八九豆子は仕事のパートナーと不倫するか、夫への不満がつのって離婚すると思う。
作者はどうして、ああも可愛くないキャラクターを産み出してしっまったのだろう?
「いいな」と思える一文があっても行動が斜め上では賛同出来ない。なんだか非常に残念な作品だった。