読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

渇愛 頂き女子りりちゃん 宇都宮直子 小学館

記事内に広告が含まれています。

2023年に世を騒がせた「頂き女子りりちゃん」の事件は覚えている方が多いと思うのだけど、私もその中の1人。まとまったルポ本が発売されたら読んでみたいと思っていた。

……と言うのも。世を騒がせた時に、りりちゃんがが販売していたマニュアルが何故か無料公開されていたのを私も読んで感心したのだ。良く出来たマニュアル本で「どうしてこんな頭の良い子がこんな馬鹿なことをしたのだろう?」と不思議に思っていたのだ。『渇愛 頂き女子りりちゃん』を読んでみて、その謎がとけた。

スポンサーリンク

渇愛 頂き女子りりちゃん

created by Rinker
¥1,870 (2026/01/21 07:00:41時点 楽天市場調べ-詳細)
ザックリとこんな内容
  • 「頂き女子」と呼ばれた渡邊真衣=りりちゃんが年上の男性…通称「おぢ」から恋愛感情と信頼を利用して総額約1億5千万円を詐取した事件を、接見・裁判傍聴・関係者取材で克明に追うノンフィクション。
  • りりちゃんは詐取した金をすべて歌舞伎町のホストクラブで「ホス狂い」的に豪遊し、推しのホストに貢ぎ続け、同時に自らの詐欺手法を「魔法のマニュアル」としてネットで販売していた。
  • 著者はりりちゃんと何十回もの拘置所での面会とやりとりを通じて、彼女の孤独や動機、被害者や関係者に与えた影響を多面的に取材し、真衣という人物の内面と犯罪の構造を立体的に浮かび上がらせていく。

感想

内容の濃いルポルタージュで作者はよくぞここまで調べ上げたものだと感心した。調べ上げた…と書くと少し語弊があるかも知れない。「りりちゃんの懐に入ってよく聞き出しましたね」って感じ。

りりちゃんの事件は一般的には「ホス狂いの若い女が弱者男性を騙してお金を巻き上げた」って感じで知られていると思う。実際、その通りではある。だけど「どうして、りりちゃんはホス狂いになったか?」という点についてはりりちゃん逮捕時には報道されていない。

りりちゃんの生い立ちを知ると気の毒ではある。いわゆる毒親育ちで父親からは性的虐待を受けていて、母からはまともに育ててもらっていない。ちなみに母は娘の裁判に1度も顔を出さなかったとのこと。

昔、何かのテレビ番組で漫才師のハイヒールモモコが「自分が少年院に行かずに済んだのは母が警察に迎えに来てくれて泣いて謝ってくれたから」と話していたことを思い出した。りりちゃんの母は娘に関心がなく、むしろ母娘の立場が逆転していて「お母さんを守ってね」と言い出しかねない女性だった。実際、りりちゃんは「ママを守ってあげたい」と何度も口にしている。

子どもの頃に「まともな親(親がいなければ祖父母でも)に育ててもらう」って人間にとって大事なことで、その後の人生を大きく左右する。幼少期に大人から愛情を受け取ることが出来なかったりりちゃんは自己肯定感が低く、常に愛情を求める人間へと育っていく。

加えて父親から性的虐待を受けたことで男性嫌悪を募らせていく。りりちゃんの中では
「大人の男性=悪」と言う考えが根付いていたため「おぢ達」を自分の同等の人間とは思っていなかったらしく罪悪感は無かったようだった。

ただし自分と年齢の近いホスト…自分にかまってくれるホストだけは別格。そして同性である女の子の友達は大事に思っていたみたい。筆者は女性だから気を許してくれた…ってこともあるだろうけど、真摯にりりちゃんと向き合っていくことで彼女の信頼を勝ち取っていく。

さて。私がりりちゃんのマニュアルを読んで不思議に思っていたどうしてこんな頭の良い子がこんな馬鹿なことをしたのだろう?」って疑問について。なるほど納得の種明かしがあるのだけど、たちの悪いアフィリエイターに取り込まれていて、りりちゃんはそのノウハウを提供して広告塔になっただけ…ってところが真相みたい。要するに彼女は完全に搾取される側だった。りりちゃんの上にはもう一段階搾取する存在がいたのだった。

私は彼女の生い立ちや人生を知って「気の毒になぁ。罪を償った暁には人生やり直して欲しい」と思った。実際、善意から彼女を支援してくれる人もいたみたいだ。だけど最後に膝カックンのオチでこの本は締めくくられている。

りりちゃん。獄中で新しい彼氏ができて獄中結婚する…とのこと(本当にしたかどうかは本の中では不明)。残念ながら、またもや悪い男の食い物にされている。不幸の連鎖を断ち切ることは難しいのだな…と、しみじみ感じた1冊だった。

作家名・作品名等で検索出来ます
50音別作家一覧はこちら
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
タイトルとURLをコピーしました