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朽葉色のショール 小堀杏奴 講談社文芸文庫

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『朽葉色のショール』は高校時代に読んだことがあるので、再読なのだけれど、ほとんど内容を覚えていなかったので、初めて読むも同然だった。

高校時代に読んだ時は、心酔できたのに、今は「ふうん」という感じだった。あの頃は、単純だったら典雅な調子に、ヤラレてしまっていたのだろうと思う。

高校時代にハマったほど楽しめなかっただけで、今になって読んでも面白いエッセイではある。

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朽葉色のショール

森鴎外の娘である著者が父に纏る様々なエピソードを記す。

姉茉莉のこと、父を訪れた人々の素顔、身辺の雑事を始め鴎外を敬慕してやまなかった太宰治のことや中勘助の詩について、永井荷風と著者との関わりなど、鍛えられた見事な文章で綴るエッセイ三十九篇。

アマゾンより引用

感想

小堀杏奴は森鴎外の次女。作家の森茉莉の妹にあたる。

鴎外は子供達を舐めるように可愛がったらしいけれど、なるほど鴎外の子供達の書くものは父親への愛情で溢れている。私は「マザコン・ファザコン」がかった作品や、逆に「親への反発」が感じられる作品が、けっこう好きだ。

人として生まれて初めて体験する人間関係なのだもの。必要以上に執着してしまったり、トラウマになったりするのは、極めて自然なことに思えるから。

小堀杏奴の書く文章は、育ちが良くて、愛されて育った人の雰囲気がよく出ていると思う。

鷹揚でギスギスしていない。伸びやかな感じが魅力的だ。しかし、そのおっとりさが物足りないという部分が無きにしもあらず。

とても勉強熱心だとは思うが「奥様風味なエッセイ」という印象を受けた。育ちの良さゆえに、世間ズレしていないというか。

だいたいからして「人間は貧乏な方が幸せだ」だなどと無邪気な調子で言う人は、まず間違いなく貧乏を知らない人なのだと思う。

貧乏で喘いでいる人は、そんなことを言わないものだ。

もっとも、強がって言うことはあるだろうけれど。この作品は、小堀杏奴がそこそこの年齢で書かれたものだが、驚くほど子供っぽくて乙女めいている。

そこが、またいい味になっている訳なのだが。

作家として興味深いのは森茉莉だが、お嫁さんにするなら作者のように可愛らしい女性がいいなぁ。こういう女性と一緒になったら、夫になった人は得なんじゃないかと思う。

毎日、楽しく心穏やかに暮らせそうだ。女友達としてなら、双方とも魅力的なので、それぞれに楽しくお付き合いできそう。

少々物足りなくはあるけれど、どのエッセイも読みやすくて、そこそこ面白いので、旅行鞄に忍ばせて、ポツポツ読むのにいいかなぁ……と思った1冊だった。

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