読了するまで、思いの他時間が掛かってしまった。
小難しい文章では無かったのだけれど、導入部に食いついていくことが出来なかったと言うか。
現在と過去の話を平行して進めつつ、2つの話が交差する……という、ちょっと趣向を凝らせた作りになっていて、作品としては上出来な部類だと思う。
玉蘭
ここではないどこかへ…。東京の日常に疲れ果てた有子は、編集者の仕事も恋人も捨てて上海留学を選ぶ。
だが、心の空洞は埋まらない。
そんな彼女のもとに、大伯父の幽霊が現れ、有子は、70年前、彼が上海で書き残した日記をひもとく。玉蘭の香りが現在と過去を結び、有子の何かが壊れ、何かが生れてくる…。
アマゾンより引用
感想
私はイマイチ楽しむことが出来なかった。敗因は現代のヒロインに思い入れが出来なかったことだろうか。
今風の言葉を使って語るならば、ヒロインは「自分探し」をする過程に苦しんでいる。
ヒロインはその中で複数の男に身体を任せて「刹那的でも肌の繋がりって大切」みたいなことを思ったりする。
私はそういうノリが何より嫌いな私としては、どうにもこうにも乗り切れなかった。
自分を大事に出来ない人って大嫌いなのだ。
言い方は悪いが、セックスが大好きで、そうする人を否定したりはしない。が、精神的に満たされないから、その代替品としてセックスをする…ってのは、どうもなぁ。
ヒロインの叔父さんの話と、その妻の話はそこそこ良かった。
むしろ、こちらのカップルはかなり好き。心に大きな秘密を抱えて、それでも天寿をまっとうするまで生き抜いた叔父さんには、心からの拍手を送りたい。
読書録には、あまり登場していないが桐野夏生の作品はかなり読んでいる。
それらの作品の共通点を挙げるとするなら「生き抜くことって素晴らしい」って部分ではなかろうか。
「それでも生きる」とか「逞しく生きる」という姿勢は尊くもあり、見習いたい部分でもある。
個人的には絶賛したい作品ではないのだけれど、作品としては上手くまとまっているし、悪くないんじゃないかなぁ……と思う。