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Cloud on the 空き家 小池昌代 講談社

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お久しぶりの小池昌代。小池昌代は小説家でもありつつ歌人なので、最近はそちらの活動の方が活発な印象だった。長めの小説はいつぶりだろうか?

私にとって待望の長編小説『Cloud on the 空き家』はかなり吹っ切れた内容だった。実は発売当初に読んだのだけど、イマイチ好みではなかったので感想を書かずにスルーしようかと思っていた。

しかし進研模試でも取り上げられたらしく、試を受けた高校生達がザワついていたと聞いて俄然「感想を残しておくか…」みたいな気持ちになった。

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Cloud on the 空き家

ザックリとこんな内容
  • ひと月前に兄を亡くし天涯孤独となったわか子は、定職に就けず中高年向けの求人に応募し、週に三日、空き家管理の仕事を得る。それは隅田川近くの清澄白河辺りの古い家だった。
  • 和歌が好きなわか子は、空き家の清掃作業中に藤原定家の「なびかじな」という歌を思い浮かべる。
  • 掃除中、突然景色が反転し、わか子は気を失ってしまう。目覚めると空き家の持ち主である河原さんと、見たことのない青年・融が心配げに彼女を見下ろしていた。時間の旅をしたような不思議な感覚に包まれ、周囲の景色が微妙に変わっていることに気づく。
  • 融は空き家の持ち主の甥だった。わか子は彼の存在が過去や記憶の断片を呼び起こすのを感じる。和歌がきっかけで再び異界のような世界に引き込まれ、死の匂いがする家の中で、幾千年の時を超えた不思議なつながりが徐々に明らかになっていく。

感想

小池昌代は女の情念とか性的な感覚を書くのが上手な人なのだけど、今回は50代の女性が大学院生に恋をする…と言う設定。「女はいくつになっても女」とか「年下を好きになって何が悪いの?」って言われてしまえばそれまでだけど、模試の問題として取り組んだ高校生達は「わか子…気持ち悪い」と感じた子が多かったみたい。

私は年齢的にわか子側の人間なのだけど正直なところ今回の作品については主人公に気持ちを添わせることが出来なかった。どちらかと言うと「わか子、気持ち悪い」と感じた高校生達の意見に同意する。なので感想が書き難くて「もう感想書かずに流してしまおう」と思っていたくらい。

人を好きになるのに年齢なんて関係ない…ってところはその通りなのだけど、今回のわか子は妄想が暴走し過ぎていて、なんかこぅ…変質者ちっくなのだ。

ネタバレを避けたいので物語の顛末は書かないでおくけれど「それは酷過ぎないか?」としか思えない話の展開で個人的には「これは…ちょっと好きじゃない」って感じだった。

だけど読み進めていく中で「この作品書いてる時の小池昌代は楽しかったんだろうなぁ~」とは思った。作者が楽しんでいる空気がある…と言うのか熱量が伝わってきたのも事実だ。

私は小池昌代って作家が好きなので「好きじゃない作品なのだから感想は書かずにおこう」と思っていた。だけど現役高校生達が小説を読んで「わか子…キモい」感じたのでれば彼らの心を揺さぶった事は事実なのだから「それはそれで凄い事のでは?」みたい感情が込み上げてきた。

私は誰の心にも刺さらないような、半年後には記憶に残らないどうでも良い作品より、好き嫌いはともかくとして誰かの心に残る作品は貴重だと思っている。その観点からすと『Cloud on the 空き家』はある意味名作…と言えるのかも知れない。

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