黄金週間のある日。その日は家族全員別行動だった。
恩着せがましいことを言うつもりはないけれど黄金週間にしてもお盆休みにしても「家庭の主婦」って立場にいると純粋な休みなんてあり得ない。夫や娘が遊びに出掛けて「私も自由にやればいい」と言う日でさえ、家事から逃れることは出来ないのだ。
午前中に食料品の買い物だの、エアコンフィルターの掃除だの、ゴミ箱を洗ったりだのして午後から「さあ、好きに過ごそう」となった時、不意に「私も私以外の人間が作ったものが食べたいな」と思った。
私とて1人で食事をすることはある。インスタントや冷凍食品を食べることもあれば、ファストフード的なものを食べに出掛けることもある。だけど、その日は「ちょっとゆっくりしたい」って気持ちがあったので星乃珈琲店へ行くことにした。
私は基本的に紅茶派だけど「紅茶の美味しい店」ってのは大阪市内まで出掛けなければならないので、近場で…となると珈琲の方が都合が良かったのだ。星乃珈琲店で「出来るだけ大人げなくて、自分の欲望を満たすものを食べよう」と思い、スフレパンケーキを注文した。
パンケーキはシングルとダブルがあったのだけど、午前中しっかり動いた私はお腹が空いていたのでダブルを注文した。ちょっと多いかと思ったもののお昼ごはん代わりなのだから食べられるかな……と。
私の目の前に運ばれてきたスフレパンケーキは素敵だった。思っていたよりボリュームがあったけれど軽くてそれほど甘くない。お腹が空いているし、これなら食べられそう。

星乃珈琲店のパンケーキ
珈琲を飲みつつパンケーキを食べ進めていったのだけど…1枚食べた時点でお腹がいっぱいになってしまった。「残すのはモッタイナイ」と思って2枚目にも口を付けたものの、結局2枚目は食べきることが出来ずに半分以上残してしまった。
「こんなことならシングルにしておけば良かった」と後悔したのはもちろんだけど、自分が思っていた以上に食べられなくなっていることに驚いた。
昔の私なら平気で食べられる量だったと思う。だけど今の私には無理だったのだ。私の理想とする私はダブルのパンケーキをペロッと食べ切って、何なら「ちょっと物足りないなぁ」なんてことを言うような健康的な中年女性なのだけど、現実の私はパンケーキ1枚食べるのがやっとの初老に足を突っ込んだパッとしない中年女性だった。
残念なとこだけど私は確実に老いている。何もかも今までのようにはいかないのだ。これから先、理想の私と現実の私の乖離はもっともっと大きくなっていくと思う。
今はまだ自分自身の老いの変化を受け止め切れずにいるけれど、少しずつ新しい自分と上手に付き合っていけるようになりたい。