読書好きの人が「どうやら私は本好きみたいだ」と自覚するのは何歳くらいなのだろう。私の場合は、物心のついた頃から本が好きだった。本とはじめて出会ったのは従兄妹からお下がりで廻ってきた童話全集だったと思う。挿絵が美麗で、童話というよりも「御伽噺」というようなラインナップだった。その後は幼稚園で出会った絵本達。せなけいこ、やなせたかし、かこさとし、古田足日、松谷みよこ、五味太郎……海外の名作絵本を知ったのも、その当時だった。
小学校入学以降は図書室だの、移動図書館だのの出現のおかげで読書の幅もグッと広がり、絵本から児童書へ、児童書から一般書籍へと以降していった訳だが、生まれて初めて出会った「絵本」の存在は、大人になった現在も読書の基本になっている。
絵本は、たくさんある本のジャンルの中でも「1冊で2度美味しい」本だと思う。
子供の頃は、ピュア・ピュアな気持ちで好きだった。煌びやかなお姫様童話も、楽しい物語も、昔話も、子供ながらに「泣けてくらぁ」というような話も夢中で読んでいたように思う。子供の頃に好きだった作品は大人になって読み返してみても大好きだと感じる。
ただ「1冊で2度おいしい」というのは子供時代のリアルタイム読書ではなくて、むしろ大人になって絵本を読み返してみて感じるものである。まず驚かされるのは挿絵のレベルの高さだろう。子供の頃は挿絵画家さんが、どれだけ立派な人であろうが、なかろうが、そんなのまったく気にしないものだが、大人になって再び手にとると「おおっ。こんな人が描いてたんだ」と発見することが多い。有名な日本画家さんだったり、海外で大人気のイラストレーターさんだったり。さくらももこ御推薦のエロール・ル・カインも絵本の挿絵を描いておられる。
一般的に絵本は他の本に較べると値段が高いといわれるが、画集を1冊買うことを思えば決して高くはないのだ。
大人目線で読む醍醐味は「絵本になる童話」の中には、人間の本質を突いた作品が以外と多く潜んでいるというところだろう。幼稚園などで好まれがちな絵本には少ないかも知れないが、こっそりNHKで人形劇化されたりする作品や、童話集などに収録されているような作品には、一般書籍顔負けというほど、やるせなかったり、切なかったり、心震える作品が多い。特に日本の童話の黎明期に書かれた作品には、そのテの話が多いように思う。最近は、とんと新作絵本を手にする機会が減っているので、新しい作品については、なんとも言い難いが、根気よく探せば「運命の1冊」に出会えるかも知れない。
もう亡くなられてしまったが、高校生まで通いつめた小さな本屋のご主人の口癖を、ふと思い出してしまった。「本を読むのに年齢なんて関係ない。面白い本は面白い。ただそけだけだ」
骨の随から本好きだったオヤジさんは、インターネットなんてまだ無かった時代に、どんな無理な注文でも引き受けてくれて、どこからともなく本を手に入れてくれたばかりではなく「これ、読んでみなさい」と注文しない本まで届けてくれたものだ。私にとって彼は読書の師匠だったように思う。
ちよっと本題からは外れてしまったけれど、これから先どんどん年を重ねても「1冊で2度美味しい」を味わうために、絵本や児童書といった類の本を読み続けていくだろうと思う。