表題作他2編収録。『怪訝山』、とても面白かった。
気持ち悪い話だったけれど、すごく面白かった。
久しぶりに「誰かと感想を語り合いたい」と思ってしまう作品だった。女性ではなく男性と。男性が読んだら、どう感じるのかを知りたくてならない。
怪訝山
日常のズレから立ち現れる狂気の世界 絵画販売会社で女性販売員の管理をするイナモリ。やばい仕事の合間、伊豆の旅館で得る奇妙な安息。
現代詩の前線を走る著者の言語感覚が光る魅惑の小説集。
アマゾンより引用
感想
『怪訝山』では、主人公の男性が年上の女性とセックスをする場面が出てくるのだけど、その女性は見た目に美しい訳ではない。
しかも「白髪染め」をしたり「閉経した」なんて言う女性なのだ。
普通に考えたら「その設定は無理だわ」と思うのだけど、ものすごくアッサリと受け入れてしまった。これは私が女性だからだろうか?
男性が読めば「無理。絶対無理」と思うのだろうか? よく分からないけれど、なんだか凄かったのだ。
これまでの人生をずっと真面目に生きてきた老人が壊れていく姿を描いた『あふあふあふ』も良かった。
これは真面目に生きてきた人にしか分からない作品ではないかなぁ。
男性目線だったけれど、共感する部分が多かった。私はまだ、この作品の主人公の年齢には達していないけれど、主人公が見た物、感じた物がやたらリアルに感じられた。
描写等色々と上手過ぎる。
『木を取る人』は他の2編とは全く趣が違っていて、気持ちの良い物語だった。
東京の下町に暮らす主婦から見た舅、剛造の男っぷりに「惚れてしまいそう」とドキドキしてしまった。
久しぶりに小説の中で「カッコイイ爺さん」に出会わせてもらった。
とは言うものの、剛造がカッコイイことをするような話ではない。滲み出る男前っぷりと言うのだろうか。感想を上手く表現出来ないのが実にもどかしい。
3編とも面白くて久しぶりに声を大にして「面白い本を読んだよ!」と言うことが出来るのが嬉しくてならない。
小池昌代の次回作を楽しみにしたい。