正直、イマイチだった。私は久世光彦のファンだが、この作品はいただけなかった。
へたくそなエロ小説としか思えないほど、セックスの話しか出てこないのだ。
竹久夢二が主人公なので、ある程度仕方が無いかとは思うのだが、それにしても酷すぎた。
へのへの夢二
環、お葉に可愛い彦乃、いずれ劣らぬいい女。夢二の死ぬ日を酒盛りしながら待っている。
富士見高原療養所での夢二の最後の二週間を、抒情的に官能的に、時には滑稽に自在の筆遣いで存分に描く。久世文学の真骨頂。
アマゾンより引用
感想
とにかく最初から延々とセックスの話ばかり続いていて、最後の方ではアップアップしてしまった。
しかし、2つばかり良い部分もあった。
1つは竹久夢二の印象が、比較的上手く描けていたという点。夢路の「ろくでなし」っぷりが鮮やかに描きだされていた。
私の中の竹久夢二は「ろくでなし」なのだ。
「ひとでなし」と呼ぶには人が良いけれど、だからって良い人とは言い難く、その行動はどう考えても「ろくでなし」というイメージ。女にだらしなく、自分勝手で、いい加減。なのに愛される……というような。
そして、もう1つは「老人臭」が漂っていた点。
「死臭」と言い換えてもいいかもしれない。この作品は「死」だの「晩年」だのを意識している人にしか書けない作品だと思う。
「死」が訪れることが分かっているのに「生」への未練に溢れていて、往生際の悪いところがとてもリアルだと思った。
少しばかり誉めてみたけれど、評価的には「面白くなかった」としか言えない。
「もう追いかけるのを辞めようかな」などと思ってしまうほどにイマイチだった。そうこう言いながらも新作が出たら、また読んでしまうのだろうとは思うけれど。
それにしても残念過ぎるくらい残念な1冊だった。