先日、伊丹市立図書館ことぱ蔵で開催された『松永K三蔵氏講演会』に行ってきた。
松永K三蔵は2024年『バリ山行』で第171回芥川龍之介賞を受賞した小説家。本好きなので昨年の芥川賞受賞は知っていたけど「松永K三蔵」など言うイカレたペンネームを見た瞬間「クセ強めの人なんだろうなぁ。極振りした作風の人は苦手だし読まなくていいか」と思っていたのだけど今年になって『バリ山行』のあらすじを知り、猛烈に読みたくなってドハマリした。久しぶりに「読み終えた瞬間、最初のページに戻ってもう1周する」って行動に出るくらいには夢中になって読んだ。
『バリ山行』だけでなくデビュー作の『カメオ』も面白い…との噂を聞いて『カメオ』も読んでみたのだけど、これがまためちゃくちゃ良かった…てか私には刺さった。
「2025年に出会ったマイフェイバリット作家のナンバーワンは松永K三蔵で決まりだな」などと思っいた矢先、お隣の兵庫県伊丹市の図書館で講演会があると知った。太っ腹なことに『バリ山行』と『カメオ』を持参すれば講演会後にサイン会もあるとのこと。
情報を知った時には「行ってみたい」と思ったものの、忙しい時期だったので行くことを諦めかけていたけど、夫から「行くしかないでしょ!」と背中を押されて行ってみることにした。そして夫から「コミケに行くのにコミケカタログを持たずに行くヲタクはいない。入場料だと思って本も買って行きなよ」と言われて、道中、書店で本を買って伊丹市立図書館へ向かった。『バリ山行』も『カメオ』も図書館で借りて読んだので手元に本が無かったのだ。『バリ山行』はAudible化されているのでウォーキングのお供にしたりもしていたけれど。
伊丹市と言うと「伊丹空港がある市」のイメージしかなかったけれど、伊丹駅周辺は景観の規制がされているのか、古い建物があったり元からある建物をイメージした街作りがなされていて素敵な街だった。お洒落なカフェやレストランなども多くてデートなどにもってこい…って感じ。
会場になっていた伊丹市立図書館ことば蔵はその名の通り蔵をイメージした建物で趣があって素敵だった。会場待ちの列に並んで会場を待ったのだけど、並んでいるのは40代以上の人が大半を占めていてお若い方は少ないイメージ。大阪フィルハーモニー交響楽団のコンサートに行った時ほどの絶望感は感じなかったものの「読書をする人間の高齢化」を感じずにはいられなかった。
あ。私、本の感想を書く時は敬称略で通しているけれど、ここからは松永K三蔵さんと書こうと思う。私と手面と向かって対面する相手を呼び捨てするほど無礼な人間ではないのだ。作家には「先生」呼びの方が良いのかも知れないけど、彼は好きな作家であって私の師匠でも先生でもないので「さん」でいいかな~と。「様」だと大げさ過ぎ気がするし。
松永K三蔵さんは小説家として活躍するだけでなく「オモロイ純文学運動」ってのをされている。色々な場所で講演会を開催されているらしいのだけど、なるほど今回の講演会の参加者をみても「文学の面白さを積極的に伝えていかないと文化として廃れてしまうよなあ」と納得した。
ちなみに私は訓練されたヲタクなので最前列で講演会を聞かせて戴いた。

松永K三蔵氏講演会
今回の講演会は『本ってこんなにオモロイでー』と言うもので松永K三蔵さんが本を読む楽しさを語る!みたいな内容だった。松永K三蔵さんの作ったパワーポイントの図解を交えたもので「なんか企業セミナーみたいなだな」と思った。
松永K三蔵さんは「仕事のできる会社員」の雰囲気があって、お喋りもお上手。彼がどんな経緯を経て小説家になったのかは知らないけれど、なんか…こう土木か建築寄り…何か作る会社で働いていたのではないかと想像した、私自身、今でこそ障がい児支援の仕事をしているけれど、そういう業界に長くいたのでそっち業界の人の匂いを感じた。(これについては私の個人的な想像でしかない)
講演会の内容については本好きの人なら「うんうん。分かる。そうですよね」みたいなものだった。思うに…本好きじゃない人が聞いた方が良い。だけど集まってるのは本好きなのが少しもったいないな…と思った。個人的には『バリ山行』で描かれていた山の写真を見せてもらえたのが良かった。読書は想像で楽しむことができる娯楽だけど、知識があった方がより深く作品を理解できる。
講演会のあとはサイン会。本を持っていけばサインしてもらえる。2冊持参した人は2冊ともサインしてもらえる…という太っ腹な企画。そしてさらに言うなら松永K三蔵さんとツーショット写真を撮ってもらえるという神対応。
推しとツーショットとか最高過ぎかよ!
……そんな訳でサインして戴いた。サインの最中はお話もできるのだけど、なんだか舞い上がって様子のおかしいヲタクを発揮。「バリ山行もカメオも好きです」と当たり障りのないことを言う。
松永K三蔵さんは偉そうなところがまったくなくて「気さくで良い人」って感じだった。Twitter(元X)で拝見していた通りの方だった。ますます好きになる。
ちなみにツーショット写真はこんな感じ。松永K三蔵さんの顔を出しているのに自分の顔を隠すとかフェアじゃないよね…と思うものの、職場バレするのが困るので許して戴きたい。

松永K三蔵さんとツーショット写真
昨年は有吉佐和子の『青い壺』の件でNHKのおはよう日本の取材を受けたのが私の読書的ハイライトだったけど、今年のハイライトは芥川賞作家からサインを戴いてツーショット写真を撮ってもらったのがハイライトになりそう。サイン本はいつか死んだら棺に入れてもらおうと思う。

イン本(バリ山行&カメオ)
……と。大満喫した楽しい1日だった。松永K三蔵さんと伊丹市立図書館の職員さんに感謝の気持ちを捧げたい。


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